2002年1月    第3回テンダー下回り-@

今月はスピーカーの制作と、1番ゲージC11のオーバーホールに追われてほとんど作業ができなかった。あれもこれもやることはよくないことだが、お正月という特殊な休みをはさんだためつい手をつけてしまったのだ。工作する場所は限られているので、一旦新しいものに取り組むとそれを完成させなければ工作ができない。

残念ながら、今月は報告できるほどの進展はない。スピーカーD105の製作記で許していただきたい。

さて、第三回の梱包は、テンダー台枠と給水ポンプ、配管などが入っていた。これについては先月号でハンドポンプを取り付けたので、半分終了していることになる。テンダー台枠も図面がわかりにくいので、毎回のことだが採寸を行い、図面を作成した。

 

テンダー台枠 テンダー台枠端梁

8620は主台枠と同様、テンダー台枠も板台枠である。主台枠の板厚は4ミリ、テンダー台枠は厚さ3ミリでやや薄い。人が乗ることを考えると板厚が薄く感じてしまうが、控えが多数入るので強度は問題なさそうだ。主台枠は丸棒が控えになっているが、テンダー台枠は平鋼が控えになっている。それだけでもかなり違う。

他にも主台枠と違う点は、右写真の前端梁と後端梁で、穴あけ加工が必要な点と(センターは出ている)アングルの入るところに溝があることだ。

いつものように採寸した後、CADで製図した。青色の破線は横控えになる。丸棒が2本、平鋼が5本入る。上部の3本にはテンダー上回り床板の取り付けビスがつく。左側が運転席側になる。一番最初に送られてきた実寸大完成図面では左下の小さな4穴にはブレーキ梃子ロッド用のステイが付いていたが、私が知っているセントラルの8620でテンダーにブレーキがついていたという話は聞いたことがない。ここを利用してブレーキを取り付けるのも悪くないと思う。図面にしてみると、軸箱部分が小さい印象を受けてしまうが、それは主台枠と比べてしまうからだと思う。

 

台枠図面

テンダー台枠図

さらに、このテンダー板台枠に、今まで制作してきた上回り図面と、車輪を重ねると以下のようになる。

テンダー側面図

ようやく、テンダー全体の印象がつかめてきた。図面を重ねて検証すると、テンダー上回り床板は、台枠全長より2ミリ長く、テンダー前端梁、後端梁からそれぞれ一ミリずつはみ出すようになっている。床板を正確に取り付けなければテンダー側面もゆがむことになり、取り付けにはかなりの神経を使いそうだ。台枠を正確に組み立てることは言うまでもない。

控えの平鋼には、台枠側板と結合するための穴があいていない。センタードリルによるポイントだけが記してある。長さがあるので、ボール盤で穴あけするにしても、かなり難しい。まっすぐ正確にあけなければボルトがスムーズに入らないことになる。しかもねじ切りが必要になるので、タップにも注意しなければならない。それを片側12箇所、両側で24箇所正確に穴あけしなければならない。

後端梁についているカプラーは、セントラル純正ではなく、動輪舎のカプラーを採寸して重ねてみた。テンダー全体の大きさと比べてやや大きめに感じる。これは、動輪舎のカプラーがファインスケールで作られているためで、セントラルの純正カプラーは9.3分の1で作られており、他のメーカーとの連結に問題があると聞く。懐が浅くかみ合わせが悪いらしい。カプラーの取り付け位置を割り出すと、後端梁上部目いっぱいに寄せることで何とかなることが判明した。主台枠の前端梁には、カプラー取り付け用の穴がすでにあいてしまっているが、テンダーの後端梁はあらかじめ穴があいていないので、取り付けには特に問題がない。

カプラーポケットだけセントラル製を使用する方法もあるので、部品の頒布状況を見て加工する。


さて、今月唯一行った加工は横控えに穴をあけるとこと、タップを立てる作業である。ボール盤のテーブルに垂直に立てて穴あけしなければならない。特にテンダー台枠下部の2本は、片側3箇所穴あけしなければならないので気を使った。

旋盤で穴あけすることもできるが、まだ使い慣れていないのでボール盤で加工した。手順はヤンキーバイスを横にして加工物を咥え、スコヤで垂直度を測り穴あけする。バイスは各種揃えておくと便利で、今回は中古工作機械屋であさって購入したものを使用している。ボロだが、このくらいの加工には十分である。幅は100ミリ、深さは45ミリでなかなか使い勝手がよい。

ヤンキーバイス

ドリルで片側の穴あけが終わったらそのままタップをチャックしてネジを切る。このようにしてすべてを加工した。ためしに台枠に組み込んでみたが、ストレスなくネジ止めできた。

「独り言」にも書いたが、アスターの1番ゲージC11を譲り受けたので塗装の勉強もかねてオーバーホールした。ただしバルブギアはかなり調子がよいということだったので、分解しないで塗装と修正だけ行った。

1番ゲージはドレンコックがないため(機種によってはある)、走行時には凝固水を煙突からドバドバ吐きながらスタートする。そのため、ボディーには長年のシリンダーオイルがたっぷりとしみこんでおり、塗装するにはまず脱脂から始めなければならない。分解をして部品をなくさないように小さな箱に入れ、ガソリンの入ったタンクにどんどん投げ込む。しばらくしたら引き上げて乾かす。

分解

分解中

塗料はどれを使用するか散々悩んだが、ニイザキモデルの新崎氏にアドバイスを頂き、大日本塗料の「サンデーペイント」を使用した。サンデーペイントはエナメル系塗料でDIY屋ならどこでも手に入る。私はこれまでラッカー系しか使用したことがなかったので興味津々であった。中川氏も8620の塗装にエナメル系を使用しており、斑が少なくて仕上がりがよいということであった。

T-5の塗装はウレタン入りのラッカー系で行ったが、表面のざらつきがでて大変だった。しかし、このサンデーペイントは、仕上がりが均一でとても扱いやすい。ラッカー系とは全く別物の使用感だ。つや消しの黒を使用し一通りの塗装を終えると見違えるほどの仕上がりになった。
逆にアスター純正ロッドフルート部には黒でスミイレがしてあるので、こちらは塗料剥離剤を使用してはがし、実機227号機と同じように磨きだしロッドに変更した。

さらに下回りを分解して各部をチェックすると、第一動輪のクランクピンが左右両側とも緩んでいてクロスヘッドに引っかかるので、ネジロック剤で固定しなおした。

すべての塗装を終えた後、小物パーツの曲がりや歪を修正して再組立した。まるで新車のようになった。

C11227 cab
動輪・ロッド フロントデッキ

綺麗になりました

最後に、アスター純正ではヘッドライトのレンズがないので、アクリル丸棒を旋盤で削りレンズとした。旋盤を導入して最初に削ったものはこの「ヘッドライトレンズ」となった。