2011年5月 運転室B
GWに一人家に残り工作を続けた。家族・仕事ともない絶好のチャンスである。
今回は2008年11月に中断していた運転室の工作である。屋根と運転台側板を目標としているやり方で接合することが難しく、その対策が思いつかなかったからである。

こだわりを捨てて工作すれば簡単だったが、ここは譲れなかった。
8620は大正機らしく側板と屋根は別パーツとなっており、側板よりも屋根が大きくはみ出している。C51以降の近代の蒸気機関車は側板から屋根にかけては緩やかなカーブを描いており、雨樋部分で溶接されているようだ。

このやり方であれば運転室側板上部を曲げ加工した後、屋根を取り付けて誤差部分を裏に逃がすことができる。

しかし、8620のように屋根が側板よりもはみ出ている場合にはアングルに似た形状のものを介して取り付けざるを得ない。

まずはこのアングルを作ることにした。

アングルを一センチほどの長さに切ってそれぞれをボルトナットで留めれば簡単だが、これを運転台前後長に合わせた長さで作りたかったのである。

セントラルのキットには一応屋根と側板の角度に合わせて作られたと思われるアングルが入っていたが、曲げ角度が全く側板と合わない。

長さも短いため、数センチ単位に切り離して使うようになっている。これでは私のこだわりから外れる。

写真は梅小路蒸気機関車館の8630である。スケールでは3mmほど側板からはみ出す計算になる。
はみ出たところには雨樋が設けられている。それを後部テンダー側へ流している。このタイプは珍しく、通常は雨樋に集まった雨は側板外側を通り、手すりと雨樋を兼ねた排水パイプで床下まで導かれれている。


屋根材自体は随分前にカットおよび曲げ加工を外注していたので、まずはこれを運転台に乗せて位置を正確に合わせる。写真では見えづらいかもしれないが、リベットの位置に合わせて穴をあけておいた。また側板との接合アングルを留めるネジ位置もリベットの位置に合わせた。
運転に邪魔になる部分はカットしてあるが、ここは取り外し式の別パーツとしている。

屋根位置は左右2mm、前は8mmはみ出す寸法となっている。後端はぴったりと一致させる。

屋根仮置き

糸のことヤスリで加工したアングル

アングルの製作は大変だったが、1.6mm真鍮板を糸のこでカットした後、折り曲げ線を三角ヤスリで溝切りをし、次に四角ヤスリでさらに溝切りをし、バイスで固定して曲げた。
設計図面を厚紙にプリントしたものを治具にして角度を調整する。

言葉では簡単だが、アングルの角度調整はとても微妙な調整が必要だった。ほんのわずか角度が狂っただけでもガバガバに隙間ができてしまう。隙間ができたまま屋根・側板をねじ止めすると応力が残って運転台の形状が狂うので何度も微調整を行った。最終的には屋根にアングルを取り付けてそのままバイスに咥えて垂直になるように角度調整した。

アングルを仮置きした位置へ合わせてバイスで仮止めし、屋根から穴を写しあける。このように位置決めが難しい時には全部の穴をいっぺんに移しあけるのではなく、とりあえず2点だけ写しあけて再度取付し、ゆがみ等が出た時には写しあけなかった穴を利用してもう一度チャレンジするとよい。

最初にあけた穴は穴を拡大すれば大抵使える。今回はわずかだが平行度に問題が出たのでこのやり方で修正した。

実測で2ミリのはみ出し

側板と屋根の取付

屋根とアングルが理想位置に取り付けられたら隙間があかないように屋根を固定しながら側板から穴を写しあける。これで屋根の位置が決まる。

アングルを上右写真のように長ものにしたかった理由は、屋根裏に羽目板を取り付けるので、一体感を出したかったからである。

大体このようなこだわりは後々どうでもよくなり、羽目板を取り付けることはなかったりする。
屋根が固定されたらもう一度アングルを外し、今度は真鍮釘をはんだで取り付けてリベット加工をする。


屋根には天窓があいている。

実機は運転台内部に小さいものが一つ(計器を見るためのものと思われる)と運転台後板より後ろに大きなものが一つ空いている。

梅小路蒸気機関車館8630の天窓

簡単ながらこれも再現した。一部の8620は近代機と同じように天窓をスライド式にしてあるものがあるが(写真の8630もそうである)、一般的には小窓は前を支点に開閉し、大窓は助手席側を支点にして開閉する。車両限界上、問題ないのかと心配になるが、実機はそうなっている。

工作は真鍮板1.6mmを細長くカットし、L字型に曲げたものを現物合わせで屋根にはめて寸法を調整し、そのまま枠をハンダで固定して四角形状にする。屋根にはまだ固定しない。
開閉をダミーにするか、可動させるかまだ決定していないからである。

糸のこで切り出し

L型を合わせて枠にする

屋根穴にちょっと硬くはまるぐらいに調整する。

ついでに、運転の邪魔になるためカットした屋根後部の切り吹き部分の支えも切りだした。

後ろから

裏から

下からみるとこのようになる。開閉することも考えたが、見栄えを考えるとねじ止めにしたほうが簡単と判断した。屋根に大小天窓があるので、外さずに運転できるかもしれない。ダミーリベットにビスを混ぜて留めねじとした。

ハンダを黒皮鉄板で使用する場合には地金を出さなくてはならない。大物でも酸洗いしておけば楽である。試しに300番の紙やすりでガシガシこすってみたが、なかなか地金は出なかった。それでも続けているとハンダが使えるレベルまで表皮を磨くことができた。

真鍮釘はあらかじめ首の下をわずかに残してカットし、こてで一個ずつハンダ付けする。

ようやく屋根の完成である。暖房安全弁とかATSとかは・・・・・いらね。ATS発電機は自作が面倒なので作る気にならない。


順番が前後してしまったが北の蒸機を再現するにあたり、軒は取り付けたいところである。いろいろな形状があるが、8620は全面ドア上部がRになっているので、形状もRになっているものが多い。

しかしよく見ると、これも面倒な工作である。大抵、軒の前側はせまく、運転台側へ行くに従って広くなる。横から見ると下面はレールと並行で上面は傾斜している。かなり面倒である。

目標はこれにしたが、横から見て下面も傾斜しているものもあるので、工作の完成度によって適当に変更する。

糸のこで切り出して曲げ加工

後ろ側は半月型の板をロウ付けした。

製作は思いつきで行った。CADで展開図を書いて、糸のこで切断。曲げ加工は適当な丸棒を当て板代わりにしてハンマーで板金する。
丸棒がコロコロ転がるので大変だったが、曲げ加工は完璧ともいえる出来栄えになった。

しかし、運転台取り付け側へ三日月型の板を銀ロウ付けする際に応力の反発によりねじれが生じた。
見るも無残になったが、もうどうでもよくなりそのまま取り付けた。前面からみると、左右とも時計回りにねじれが生じている。

別にはんだ付けでもよかったものを、丁度別物を銀ロウ付けしていたのでついでに・・・としたことがいけなかった。

さあ、これで運転台も残りが少なくなってきたぞ!あとは逆転機側の加工と側窓の軒、床板との結合である。ま、いつになるかわからないが・・・