2007年4月 煙室B

煙室戸の工作。一見簡単そうに見えるがとても難易度の高い工作である。コッペルプロジェクトでも同じようなことを書いたが、8620の設計は自分でなくセントラル鉄道であり、送られてきた部品を加工するしか方法がなかった。難易度はさらに高くなってしまった。

今月の工作の報告はひとことで言えば穴を4個明けてタップを立てたというだけのことだが、ドリルを三本折り、放電加工で取り除いた後、今度はエンドミルの刃先が折れ込んだ。回転数、加工方法は何度も検証したが問題があるようには思えなかった。

失敗の結論としては「素材に対して加工する穴が小さすぎた」ということである。煙室戸はアルミのバルクから挽いたものであり、非常に粘り気がつよい。1.0mmのドリルでアルミのバルクに深さ12mmの貫通穴を開けるという事自体かなりムリがあった。

煙室戸の加工については以下の手順で失敗した。

 

@ 球面に対して2.0mmの穴を水平投影面に垂直に開けるために1.0mmの下穴を開けようと考えた。
A 1.0mmのドリルが折れ、「次こそは・・・」と同じ失敗を3度繰り返した。
B ドリル除去のため放電加工の依頼をしたところまでは良かったが、説明不足で球面に対して垂直に穴をあけられてしまった。(水平投影面に垂直と指定しなかった)
C 一度傾いた穴をまっすぐに修正するには2.0mmのエンドミルを使わざるを得なかった。
D エンドミルの刃が加工途中に欠けて穴に残ってしまった。
E それに気が付かずに加工を進めてひとつの穴が曲がってしまった。
F 修正が難しくなったのでそのまま使うことにした。
※@〜Bの失敗は2006年12月に説明しております。リカバリーにそれだけ時間がかかったと言うことです。

それにしてもアルミは厄介な代物だ。旋盤でアルミ丸棒を切削すると刃物にこびりつく、キリコは帯状になって延々とにょろにょろする、それを取り除くために素手で触ると手を怪我する、である。
同じアルミでも鋳物であればサラサラしており、加工が難しいという印象はない。金輪際、煙室戸にはアルミを使わないと心に誓った次第である。

刃が欠けたエンドミル 2.0mm

エンドミルによる煙室の穴あけ

正面から見て左上の穴が難航した。この穴にエンドミルの刃が折れ込んだからである。アルミに食い込んだエンドミルの刃先はタップも、新たなエンドミルも弾き飛ばしてしまう。2.3mmのタップ加工後、ネジを通してみたがわずかに傾いている。
ナンバープレート取付台座は一度締め込んだら外す必要はないため、全部の加工が終了したら曲がりを修正すればよいだろうと言う結論でとりあえず先に進めた。

次に台座を加工した。台座は切削しやすい真鍮を使った。2.5mmの真鍮丸棒をよく研いだハイスバイトで2.3mmまで削り、2.3のダイスをたてる。これを4個作る。ネジ側の長さは煙室戸裏面に1mm程度突き出すようにしておく。上の二本は煙室戸フランジまで貫通させるので12mmほどのねじ切りになる。
突き出す理由はねじ込んだ後カシメるためである。煙室戸は高熱にさらされるのでロックタイトはもちろん接着剤は使えない。カシメて裏から抜け止めしておけば大丈夫だろう。

ナンバープレートが付く側は適当に切って煙室戸にねじ込み、一気にフライス盤で高さを決定する。

高さを指定して傷を付ける

仮のせして確認する

エンドミルは台座にあてて傷を付ける程度で終わりである。理由は高さを確定するためである。4本全てに傷を付けた後、いったん外して旋盤で仕上げる。へそをわずかに残しておき、ナンバープレートを乗せて位置・高さをチェックする。
ドキドキモノだったが、位置はぴったりだった。問題がなかったので台座を再度外し、今度はナンバープレート取付ボルトのための穴あけ→タップ立てを行なう。加工はもちろん旋盤で行なう。これによりパイプに近い形状になる。

ナンバープレートの固定は頭径2.0mm、1.4×6の真鍮六角ネジ(動輪舎製)を使用した。違和感なく取り付けられたのではないかと思う。頭径2.0mmのボルトを締め付ける工具はなかなか手に入らない。

水平度、直角度をチェック

上から・・・

これで塗装を除いて煙室戸の作業は終了。いやぁ、大変な工作だった。マスキングは傷を防ぐ目的で貼り付けてある。
煙室関連は煙突の取付、手すりの取付、その他小物の追加があり、まだ当分かかりそうである。