2006年6月    ボイラーの問題点@

先月報告させていただいたように、ついにセントラル鉄道から最後の頒布であるボイラーが届いた。
時間がなく工作はとても進められないが、ボイラーだけは話は別で、工作をしなくてもできる作業が山盛りである。

連載が止まりがちなのは私の生活環境が大きいが、それだけではなくセントラル鉄道のキット組み立てのコツとして、次に乗る重要なパーツの状況を見て工作しなければならないということもあった。

順番から行くと次の工作は煙室になるが、煙室と煙室台の取り付け位置はその後のボイラーとのジョイント位置を決定してしまう。
もちろん、排気ノズルの位置は決まっているので大きく動かすことはできないが、どんな問題がでてくるか全く予想が付かないので「なんとなく先に進める(工作する)」ことは絶対に避けなければならない

まして、煙室台や煙室は失敗が許されるほど簡単な部品ではなく、自分で作り直すとすると大変な手間がかかるので、その加工手順の吟味は大きな意味を持つ。

そこで、届いたボイラーを検分し、CADに落とした後、問題点を洗い出す必要がある。

今回の更新でボイラーの写真を掲載しようと考えていたが、どうしても時間が許さなかった。ボイラーのような表面が光っているものは写真を撮るのもかなり難しい。


毎度の事ながら寸法をとった。時間の関係でブッシュ、煙官、加減弁台座の位置は割愛させていただいた。

ボイラー外寸法

最初にボイラーを開梱したときに?と感じたところがあった。
それは蒸気ドームである。加減弁関連のパーツが送付されてきたときに添付されていた写真では、蒸気ドームは実機と同じ立派な台座が付き、さらに径の大きな砲金鋳物のドームが付いていた。しかしこのボイラーは細長い英国機のようなドームになっている。径もかなり小さい。

さらに、すぐに確認できる外火室に高温ハンダで処理されたと思われる補修箇所が見られた。また、缶胴が熱変形と思われるが、縦径と横径に誤差が2mm出ていた。つまり楕円になっていた。図面寸法では140mmとしたが、ここは煙室にスッポリとはまらなければならないところであり、楕円を修正しなければまず間違いなく煙室にはまることはないだろう。なぜならクリアランスがほとんどないからだ。

最後に、最大の問題点は「小型蒸気機関車製造協会」なるものに加盟していると聞いていたが、その安全規則に基づいた圧力テストの結果票、シリアルナンバー刻印、写真等が一切添付されていなかったことである。

これについては、いずれ私なりの見解を書こうと思うが、とりあえず採寸によってわかった問題点を洗い出さなければならない。ポイントは以下である。


ポイント1 膨張受けの取付位置

懸念していた最大のポイントはボイラー中心線と膨張受け下側までの寸法である。採寸の結果、104mmであることが判明した。
なぜ、膨張受けの位置が大切なのか?この高さが高すぎても低すぎてもボイラーが傾くことになり、見た目だけでなくあらゆる点で問題が発生してしまうからである。

ポイント2 蒸気ドーム・安全弁台座の位置

蒸気ドームと安全弁の位置は設計の段階でミスをすると後で修正がきかない。蒸気ドームが設計よりも前であれば蒸気ドームカバーも前に寄ることになる。外観に大きく影響する点である。

ポイント3 ケーシング穴位置とポイント2との整合

蒸気ドーム、安全弁、蒸気分配箱の位置は当然ながらケーシングの穴位置と一致していなければならない。ケーシングは丸め加工、穴加工を行なったうえで頒布されているのでずれていると使い物にならない。

ポイント4 煙室の締結位置

ありえないとおもうが、缶胴の長さが足りない、あるいは長すぎる等の理由で煙室とボイラーの締結ができない可能性もある。位置が前過ぎても後ろ過ぎても問題が発生する。またポイント1〜4までの各項目との整合性も確認する。

以上の4点について確認した結果を報告する。ボイラーだけは追加加工ができないので、全てをボイラーにあわせなければならない。


ポイント1 膨張受けの取付位置

やはりというか、問題が発生した。膨張受けは台枠の上面に乗らなければならないのだが、図面上台枠にめり込んでしまっている。膨張受けの取付位置変更はもちろんできない上、膨張受けの縦方向の寸法とほぼ同じ数値ずれているので膨張受けを削って調整することもできない。
ここから判断すると、セントラル鉄道側で加工の際に膨張受けの取付位置を膨張受けの下面にあわせなければならないところを上面であわせてしまったのだろうと推察できる。

ボイラー中心高を設計どおりにするには台枠の上面を正確に削り取る必要がある。この加工をするには台枠を平板の状態まで分解しなくてはならない。つまり、塗装を行なわなかったこと、バスコークなどを使用して本組しなかったことが、正解となったわけである。
しかも台枠に最初から開いている穴が削らなければならないところに開いており、削り取っただけでは膨張受けを傷つける可能性もある。

こちらの図面は台枠にボイラーを搭載したところを正面から見た図である。必要最小限のパーツのみ書き込んである。左側の6.35mmは台枠を削り取らなければならない寸法である。
第三動輪軸箱守りは狭火室の機関車の場合、外火室と干渉するので大抵他の軸箱と比較して形状が異なる。8620も例外ではなく、第三動輪軸箱守りの上面は第一、第二動輪の軸箱守りとは形状がことなり、ミーリングで削り取ってある。

このスペースには灰箱が絡んでくる。寸法では27.5mmと14.5mm。余裕があると見てよいかもしれない。
図面右側の紫線はランボードステーである。なぜこのパーツがボイラーと関係があるかというと、このステーはランボード上段を支え、台枠とはボルトナット締結されている。そのナットが外火室と台枠の隙間に入るからであり、M4のナットの厚みから判断すると3mmという寸法はまず干渉すると見てよいだろう。
台枠の穴は4mmで開いてしまっているので、タップを立てるにはM5に変更することになる。これも大変な作業である。

最後に右上の0.5mmだが、これは台枠の上面内側の角と外火室の隙間である。外火室は斜辺になるので外火室を底辺とする垂線で計測するともう少し隙間はあり0.8mmになる。

しかし、ボイラー外火室には多数の控えが入っているので、ケーシングをかぶせた場合には台枠上面内側と干渉するだろう。台枠上面内側をヤスリで斜めに削り落とすか、あるいは膨張受け位置の加工に絡めて台枠上面を6mmほど下げてしまうのも良いかもしれない。

んー、ボイラーを載せるという最終段階で台枠を作り直す必要がでてきたぞ!ポイント2以降はまた次回。