2004年5月 「第10回 ドレンコック−@」

本格的な工作再開の前に小さな工作から・・・

コッペルにかかりきりでなかなか取り組めていないのが8620である。頒布順序から行くと、もっと前に加工しておかなければならなかった部品だが、ちょうどリハビリによかろうと本部品を工作した。

ドレンコックの工作は弁本体よりも梃子関連が中心になる。弁本体に行なう加工はドレン噴出し穴の穴あけと開閉棒の穴加工である。
説明書によると下に向けて30度の角度をつけ、さらに弁体と取付ネジ部の角に穴を空けるということになっている。おまけにドレン弁は円筒形なのでバイスに咥えにくく、タダでさえ穴あけは困難な品である。

部品の加工が後回しになったのは穴あけの失敗が怖くてやれなかったからである。(笑)
ヤトイを作るにしても大変なものになる。しかも経験上ヤトイを使ったからといって必ず良いできになるとは限らない。意外とエィ、ヤーの勢いでドリルを立てたほうがうまく行ったりするのである。

で・・・いろいろヤトイも考えたが、結局エイヤーで行くことにした。バイスに咥えて、ピンバイスでガイド穴を空けてからボール盤で穴あけする。

セントラル鉄道8620のドレンコックは片側3個、合計6個ある。そのうち、中央のドレンコックはダミーである。ダミーだがパーツ自体は実際に作用するものと同じになっている。

ということは、最低4個ちゃんと仕上げればよいのである。で、2個まで失敗が許されるのならエイ、ヤーである。

 

ピンバイスに1mmのドリルを咥えて、目測で大体の位置を決めて皿モミする。皿が大まかにできてきたらボール盤で1.5mmの穴を開ける。角度は15度前後傾けて開けた。

人間の目は大したもので、ハイトゲージできちんとケガイた穴位置よりも正確に穴あけできたりする。今回は6個ともド真ん中に穴を開けることができた。


つづいて開閉棒の穴を仕上げる。あらかじめガイド穴で長穴が開いているが、(上記掲載の図面は加工前)開閉棒の断面は長方形なので、精密ヤスリで所定の寸法と形状に仕上げる。これはチマチマした作業で、数も多く、うんざりする工作だった。

左が加工前。右が加工後

今月、最も加工に時間がかかったところはこのヤスリがけだ。写真の加工後の穴のサイズは1.8mm×3.6mmである。この穴を削る角ヤスリとなるとなかなか入手できない。私はいつもお世話になっている中古工作機械屋で探し当てた。
続いて作用棒である。セントラル鉄道から送られてきた部品は、ドレン開閉棒のみステンレス鋼のレーザーカットで作られていた。それ以外はただの平板でヤスリと糸鋸で整形する。

奥はドレン開閉棒・手前は作用腕の材料 レーザー加工したドレン作用腕(運転室側)

コッペルの関連でレーザーカットをお願いする機会があったので、ついでに作用棒も加工していただいた。本来なら上左写真の長方形の板を上右写真の形状まで手で仕上げなければならない。

作用腕はシリンダー後に位置し、クロスヘッドやスライドバー、制輪子吊を微妙に逃げてドレンを開閉する。そのため、複雑な曲げ加工が必要になる。

 

動輪が左右対称になっていますが・・・突っ込まないでくださいね。

図面は現在送られてきている部品を組み込んだ正面図である。申込時にセントラル鉄道から送られてくる全体図は側面図(しかも昭和58年9月の図面・・・)だけなので、正面図を見ることができない。採寸作業は面倒だが、CADのありがたいところである。
図中青のラインがドレンコック作用腕である。左右を貫通シャフトでつなぎ、両側の作用腕を同時に作動させる。図でお分かりいただけると思うが、運転室側の作用腕はシャフトの上へさらに伸びて、ここから運転室へ作用棒が延びるわけである。
こう見ると・・・ガニマタであることがよく分かる。

ところで話がそれてしまうが、セントラル鉄道8620の最も評価できる点は、このガニマタ感を打ち消すために相当な縮尺調整をしていることである。
セントラル鉄道の8620は「縮尺何分の一」と明確に回答できないのである。たとえば、ボイラー径1/9.2、全長1/9.1、全幅は1/8.7、全高は1/9.2、動輪径1/9.0というように8620の印象を崩さないようにスケールダウンしている点である。ガニマタ感を消すために全幅はスケールよりも大きくなっている。

斜め上からセントラル鉄道8620を見下ろした場合、ランボード幅が大きいことに気が付く。
以前からこの点は気になっていたが、これはこれで涙ぐましい努力が見えるようでなかなか気に入っている。平伏してレール面から機関車を見上げると、いつもビデオで見ている8620そのものである。
まあ余談はこのぐらいで・・・・

CAD上で作用棒の曲げ形状と位置を確認した後、作業に取り掛かった

ボール盤のテーブルと同化してしまい、イマイチ見にくいかもしれないが、写真は完成したドレンコック作用棒である。手前が運転席側になる。左右の腕の位置を一致させておかなければ左右の開閉棒の動きにズレが発生する。

そのため、以下の順序で工作した、。

1. 作用棒をバイスではさんで寸法どおり曲げ加工
2. 左右をつなぐ棒のブッシュをロウ付けする
3. 左右の作用棒をシャフトとロックタイトで仮固定し、平板の上で左右を一致させて接着
4. ブッシュに回り止めのビス穴を開ける
5. バーナーであぶってロックタイトをはずしてビスで再組立
以上の手順でおこなうときっちり左右一致した位置で固定できる。つまり開閉棒は均等に開くわけである。
弁は以下の部品で構成されている。
写真はドレン弁本体をシリンダー側から見た写真である。弁座はドレン弁本体最上部がそのまま弁座として機能している。弁本体には段付き加工されたシャフトが入っており、開閉棒に刻まれている勾配を利用してシャフトが上下し、弁座に鎮座しているステンレス球を押し上げて排水する。

弁本体構成部品

非常に簡単な構造であるが、弁本体を自分で切削して作るとなると大変な加工になる。自作する場合、ドレン弁本体の加工は複雑だが、梃子関連は単純になるのでそれなりのメリットはある。

ちなみにシャフトの径は太い部分は2mm、細い部分は1.2mmである。もし、私が旋盤でこの部品を切削したらまず折ってしまうだろう。


ドレン弁本体をシリンダーにねじ込み、ロックナットで位置決めて固定する。ネジピッチは細目になっている。開閉弁と作用棒をつなぐ平板に穴加工、曲げ加工をしてすべてを組み立てた。

↓マウスポイントをのせると弁が開閉します↓

ドレン弁作用棒の残りはランボード、キャブとの干渉を確認しながら工作しようと思う。というわけでタイトルを「−@」とさせていただいた。

今月もなんとか更新できた。