2002年12月    テンダー給水配管−A LP42ヘッドライト

キットを購入して製作している以上、送られてきている部品を最大限利用して製作することがもっとも経済的で、効率が良いことは確かである。しかし、安価で、且つどこでも手に入るもので工作の簡略化を図ることもまた経済的である。
時間もお金である。

動輪舎の機関車はテンダーと機関車の水ホースに、エアツール用のシリコンチューブを利用している。このシリコンチューブ継ぎ手は安価で、しかもチューブの抜き差しが簡単に行える。また耐久性も高いという。
どのようなものなのかイメージが湧かなかったが、実際に中川氏のC56を研究することでその構造がよくわかった。早速ホームセンターで仕入れてきた。

エアーメイルコネクター

正式にはエアーメイルコネクターといい、その華奢な形状から想像がつかないほどの圧力に耐えることができる。説明書きには常用圧力1.0Mpa(およそ10気圧)までOKとある。ただし適用流体は空気となっていた。
あちこちでヒアリングした結果、ボイラーテストにまで使用し、12気圧まで漏れなく使用できたという報告を受けたので、このシリコンチューブとエアーメイルコネクターを使用することにした。

これにより、外径6mm、内径4mmのシリコンチューブを使用することになったので、配管もできるだけ簡単に且つ細いものに変更した。全ての継ぎ手をエアーメイルコネクターを使用することもできるが、三方支コックの継ぎ手も全て作り直さなくてはならなくなってしまうので、銅配管とシリコンチューブを併用することにした。
銅管の曲げは難しいので、動輪舎からL型継ぎ手を購入した。

水ホースの継ぎ手は全面的に見直しになったため、水分配箱を製作した。材料は真鍮角棒である。運転室側の分配箱は、インジェクターと軸動ポンプ吸入側、助手席側は軸動ポンプリターンとハンドポンプ排出にまとめた。インジェクターと軸動ポンプ吸入側は、どちらも水を吸入する側になり圧力はかからない。入り口一つ、出口2つの分配箱となる。
一方、軸動リターンとハンドポンプ排出はハンドポンプ側が高圧になるので、それぞれ別系統にして入り口2つ、出口2つで製作する。

インジェクター、軸動吸入側分配箱

L型継ぎ手加工

動輪舎のL型継ぎ手を旋盤で加工し銀ロウ付けする。L型継ぎ手の旋盤加工では、穴にネジを切って長ボルトをねじ込みチャックした。
水分配箱の雌ネジはエアーメイルコネクターに合せたの雌ネジである。ここで初めて、PTという規格のネジがあることを知った。PTはテーパーになっており、普通のネジと違い途中まで締め込めば十分耐圧するという優れものである。早速工具商でPT規格のタップを購入した。

こうして出来上がった分配箱が下写真である。

ハンドポンプ排出側および軸動リターン側


さて、水分配箱を取り付けるためにはテンダー前端梁に穴あけして取り付けなければならないが、私らしい失敗をしたので大公開することにした。

連続穴が失敗穴。左右の穴は元々のステー穴

作り直した前端梁(右)。しかしこれも・・・・

上左写真の不必要に穴が空いた前端梁はその失敗した結果である。CADで穴位置を確認して穴あけしたところまでは良かったのだが、
@ 前端梁を上下さかさまに罫書いて穴あけしてしまった。(2箇所)
A 上下正しい方向にひっくり返して穴あけした。(2箇所)
B 取り付けてみたら穴位置が合わず、製図の間違いだったことに気がついた。(2箇所追加)
C 8箇所も無駄に穴が空いた前端梁を使う気になれずレーザーで同じ物を外注した。
D せっかく外注したものを今度はタップを折ってダメにしてしまった。
いかにも私らしいと思う。実に簡単な加工だが、「前端梁に2箇所穴をあける」という作業に莫大なお金を(4000円ぐらいかなぁ・・・)費やしてしまった。最近このような失敗が多い。

気が滅入ってしまったので、配管作業はお休みして小物を作ることにした。前回T-5の時にはクラウンモデルのLP42を購入したが、経費節減の為自作することにした。

鋼材屋で外径40mm、内径34mmの真鍮パイプを購入した。肉厚3mmとなる。これを利用した理由は、放熱機の製作が楽になるからである。前面蓋部分は師匠からのアドバイスによりスプレー缶の底を利用した。直径40mmのスプレー缶を鋸で切放し、真鍮パイプに被せて加工する。文章による説明より、写真で判断していただいたほうがわかりやすいかもしれない。

真鍮パイプ外径をパイプ肉厚分だけ削り・・・

裏蓋は旋盤加工

ホールソウで穴あけ

余ったパイプを外周に合うようバイスでつぶして

銅板と銀ロウ付けする

4mm幅の銅帯材を銅板に銀ロウ付け

細かなパーツを半田でつける

ホームセンターで購入したアクリル卵

頂点をレンズとして使用する。

反射鏡はアルミ丸棒をすり鉢状に削って完成

加工で難しいところは特になかったが、アクリル卵を旋盤でカットしているときに、一つ割ってしまった。灯体受けは先に帯材をロウ付けしてから現物あわせで曲げ加工する。

反射鏡は13mmの太いドリルで穴をあけたあと旋盤ですり鉢状に中繰りした。アルミを初めて削ったが、バイトにアルミカスが付きマメに磨かなくてはならなかった。切子がダラダラと長く渦巻く厄介な素材だった。

ヘッドライトは機関車にも必要になるが、こちらはできればシールドビームに挑戦したいと思う。(LP42は2個作ったが・・・)蒸気機関車現役時代、シールドビーム(LP402)はとても嫌われて人気がなかったと聞くが、現役時代を知らない私は特に違和感がない。C11、C12、C56、8620などボイラーが細い機関車にはかえって似合っているような気がする。違和感を感じるのはむしろ250W型(LP403)である。灯体が大きすぎて小型機関車には似合わない。梅小路のC1164にはLP403がついているが、どう見ても大きすぎる。やっぱり元々ついているLP42が一番似合っていると感じる。


テンダーの後部につくステップはキットに含まれていない。以前ブレーキパーツをレーザーで発注したときについでにステップ吊板も頼んでおいたのでこれを取り付けた。組立は、ハンダかロウ付けで行おうと考えていたが、とても便利なものを紹介していただいたので、使用してみた。
それは構造用接着剤というもので、接着剤本剤に硬化剤を加えて接着するものである。強度については、後々報告したいと思うが、とりあえずはかなり頑丈である。おそらく問題はない。

TREEBOND 構造用接着剤3921

リヤステップ

使用したところは右写真ステップ本体と吊板とを繫ぐ真鍮アングル部分である。ハンダ付けやロウ付けする場合には位置決めピン等である程度固定しなければならないが、これなら一発である。やけどもしない上、ハンダゴテを準備する手間も不要である。フラックスによるさびの心配もない。
接着して一日置いた後、あちこちから落としてみたが外れることはなかった。このようなものは工作過程が変わるほど便利なものなので、今後は積極的に使用していきたい。

ちなみに、ステップ本体の網板は動輪舎から購入した。プレスによる網加工で非常に硬い。


再び給水配管の取り付けに戻り工作を続けた。ここで再び問題が発生した。セントラルの説明書に特に指定がなかったので気にしていなかったが、よくよく考えてみると軸動ポンプのリターンをどうやって水槽に戻せばよいのか?ということである。
追加で送られてきた部品封筒をもう一度見直すと、「テンダー前板部に穴を空けて・・・・」とある。ここも最初から設計に入っていなかったことは間違いない。すでに密封したテンダーをいまさら加工する気にならず、仕方がないので、テンダー後部の水抜き穴から水を戻すことにした。

幸いこの排水口にはネジがきってあり、パイプ状の水抜きになっている。このパイプを加工してリターンすることにした。

テンダー後部排水口

排水パイプを途中で切断して加工

右写真の排水パイプは本来六角の部分で繋がっていたものだ。これを途中で切断して、真鍮六角棒にエアメイルコネクターをねじ込んだものをロウ付けし、さらにパイプ内径にぴったり合う銅パイプを挿入してロウ付けした。

完成したリターンパイプ

取り付けた状態

銅パイプは取り付けた状態で水槽の全高より1cmほど短く作っておく。これで水面より上から水を戻すことができる。また、元々付いている排水口が中央寄りの後部なので、給水口のふたを取ると水の戻り状況をかろうじて確認することができる。問題が発生しやすい軸動ポンプの可動状況を知ることはメンテナンス上重要である。

これで全ての配管が揃ったので、全てを取り付けて確認した。

インジェクター・軸動ポンプ側 リターンおよびハンドポンプ側

完成した給水配管

写真を残していなかったが、上回りの道具箱にもハンドポンプの配管がある。ここはそれほど難しくはなかったが、床板配管用の丸穴が全く使えず、台枠と同様四角い長穴へ変更した。配管用の穴は大きければ大きいほど加工取り付けが楽になる。

気がついたら2002年も終わりになっていた。テンダーだけではや1年である。最大の難関だった配管が終わり、残りはあと少しになった。