2002年6月    手動ブレーキ増設-@

テンダーは上回り、下回りとも80パーセントの完成状態になった。が、まだまだ給水配管やカプラー、装飾が残っているので道のりは長い。

セントラルの8620はクラブの中川氏が所有しているので、何度か運転をしたことがある。この機関車は外側給気のスライドバルブであり、絶気になるととても気持ちよく惰行する。客扱いの多い日本庭園鉄道での運転が中心となるため、安全面も考え手動ブレーキ装置を自作することにした。

第一回配布でセントラルから送られてきた実寸大側面図では、テンダーに一部制輪子や制輪子吊が記載されている。
まずは、この寸法をもとにして図面を製作する。制作にあたっては次のような条件でおこなうことにした。番号は優先する順位である。

@ コストを最大限抑える
A フライス加工が必要にならないよう工夫する。
B ブレーキとしての性能をきっちり出す。
C すでに完成している機関車でも無加工で取り付けできるようにする。

まず、実機の8620を研究しようと資料を集めたが、相変わらず資料不足で、なかなか欲しい図面・写真が手に入らない。どちらかと言うと8620は好きな機関車ではないため、蓄積してきた資料が全く無いのである。

近所に8620がないのでやむを得ず焼津のC5096を研究した。C50はテンダー車輪の前側(機関車側)にブレーキがついている。
ライブスチームでは面倒な配置である。理想としてはレバー也を手前に引くと制輪子が車輪を押さえてブレーキをかけるプル型が簡単で好ましい。しかし、前ブレーキでは、どこかで逆転梃子を入れるか、あるいはプッシュ式にしなくてはならない。しかもCを実行することが難しい。適当に開いている穴が無いのである。
どうしようかと思案に暮れているとき、知人から8620は後ブレーキだと教えられて事なきを得た。セントラル図面は実機と同様だったわけである。
梁や吊などの強度面からは前ブレーキのほうが好ましいようである。実機では入れ替えなどのバック運転が多い機関車は後ブレーキ、前進主体の機関車は前ブレーキとなっているらしい。つまり8620は例外ということだった。しかも後ブレーキならば台枠に4mmの穴が2個ずつあいており、利用できそうである。

加工については、レーザーカットを最大限利用し、同じ形のものを多数切り出すという性格上最もニガテな作業を避けるようにした。そしてできあがった図面が以下である。
水色のラインがブレーキ装置である。(台枠控え等一部透過あり)


テンダーブレーキ装置側面図

 


テンダーブレーキ装置上面図

制輪子の位置はほぼ車輪の中心高である。図面では私が座ることを考えてやや位置が高くしてある。引き棒は書籍「ライブスチーム/渡辺精一著」を参考にした。全ての車輪に均等に製動力を伝えるため、第一軸の釣合梁は2:1、第二軸は1:1、そして第三軸はジカ付けしてある。
実機は制動梁一本に付き右左と2本の引き棒が付くが、面倒でとてもまねできない。コストもかかる。丈夫なものを一本つけることで対応した。制動引棒は4mm丸棒を使う。

制動軸は10mm丸棒で、左側にレバー也、足踏み也を付けるため40mmの丸棒を付け、そこにレバーを設置する。このあたりは完成してから詰めていこうと思う。

制輪子は、フランジをまたぐ形状にすると鋳物を使わざるを得なくなる。「ライブスチーム」を読むと「制輪子に真鍮の板をはんだ付けしておくと取替えが簡単で車輪が傷まない」とある。これは実行してみたいと思う。自分ではフライス加工ができないため、サンドウィッチで作ることにした。


制輪子構成部品

このような3枚の板をレーザーカットで抜いてもらい、ビス止めした後銀ロウ付けする。この方式ならフライス加工が不要になり、制輪子吊ともぴったり組み合わせることができる。(と思う)

制動梁は下図のようにフォーク型に切り出してもらい、丸棒をのせて銀ロウ付けする。制動梁側は5.5mmでスリット加工し、丸棒は6mmを使用する。下右図は組立後の制動梁と制輪子吊である。制輪子吊と制動梁は図のように中央より上にビス止めされることになる。

制動梁

制動梁・制輪子吊・フォークエンド

強度面で不安がないこともないが、銀ロウ付けは相当の強度があるようなので試してみる。

ここまででほとんどの問題が解決したので、レーザーカット用のデータを製作して備えた。

レーザーカット用パーツ図

@ 制輪子構成パーツ(外側および内側用) E 制動梁
A 制輪子(中側用) F 制動軸受
B フォークエンド構成パーツ(中側用・ヤトイ用) G 制動軸腕
C フォークエンド構成パーツ(表側・裏用) HI 制動釣合梁
D 制輪子吊 J 制動釣合板
番号が見づらくて申し訳ない。材料はすべて3.0mm鉄板である。

さて、データを作ってから探すのもいかがかと思っていたが、どこでカットしてもらうかという問題である。
国道一号線沿いに以前から気になっていた会社があったので、まずそこへ飛び込んだ。図面をプリントアウトしたものを持っていき、説明できるようにしておいた。

会社は「岩本鋼板工業」という会社でかなり大きな会社だ。看板には「レーザーカット・シャーリング・パンチング・ベンディング」とあり、金属加工で必要なものはほとんど取り扱っているようだった。

アポなしで訪問してしまったが、専務取締役にお会いでき、レーザーカット加工をお願いすると二つ返事で引き受けてくれた。個人でも全く問題なく対応していただいた。鋼材の在庫を確認すると3.0mmの黒皮は取り寄せになるということだったので、3.2mmの黒皮を使用してカットをお願いした。制動梁のロウ付け材を若干寸法変更することで設計変更できる。メールでDXFデータを送付して早速カットをお願いした。

岩本鋼板工業は総合金属加工業者として、あらゆる加工に対応していただける。個人でも全く問題ないということなので、加工に困っている場合には問い合わせをしてみてはどうだろうか。とても誠実に対応していただいた。

岩本鋼板工業株式会社

〒420-0821 静岡市柚木50番地
п@054-261-7141

Fax 054-261-7233

E-mail kouhan@i-kouhan.co.jp


そして依頼してから僅か3日ほどで、パーツが切り出された。手作業ではとてもできる作業ではない。

カットが終ったパーツ

そして今月は能書きだけで全く工作をすることはなかった。