2002年4月 第2回テンダー上回り−C

作業があっちこっちに飛んでしまって申し訳ないが再びテンダー上回りに戻る。一応、昨年の12月で仮組はすべて終え、上回りは完成形状になっていたので今月はそれを本付けした。ただ単にそれだけの作業であったが、たっぷり一ヶ月かかってしまった。
連載で掲載したように、セントラルから指定された皿ビスは使用せず、真鍮6角ビスを使用して全てを組み立てた。そのためはんだ付けを終えた段階で、ねじ山を隠すためのヤスリがけが不要である。とにかく、水が漏れないようにはんだ付けするだけである。

5インチともなるとテンダーは大きく、部材も厚いため、100ワットクラスのハンダゴテでは歯が立たない。かといってバーナであぶると、真鍮平板は応力でスルメイカのようにぺこぺこになってしまう。まず、クラブの中川氏から300ワットのハンダゴテを貸していただきチャレンジした。しかし、私はハンダゴテによる板金はほとんど経験がないため、なかなか上手くはんだが流れてくれなかった。仕方がないので、バーナーの火を絞り、当てる角度と位置を工夫してバーナーによる半田付けで組み立てることにした。

手順として、

1. 底板Aと側面板BCを本付けして、その後後部の合わせ目Dを接合する。
2. 前板Eを取付けて箱にし、その時点で底板の水漏れをチェックする。
3. 炭庫と水槽の仕切板@を支えるアングルのうち、水槽側の一本だけを組み終わったテンダーにはんだ付けする。
4. 炭庫と水槽の仕切板@に残りのアングルおよびポンプと炭庫の仕切板等をすべてはんだ付けする。
5. 側面板・底板に炭庫と水槽の仕切板を組み付け、水槽を密封する。
6. ポンプ室仕切板を前板とはんだ付けする。
7. 水漏れテストを行う
8. モールを取り付ける。
9. 前板に道具箱と石炭取出口、その他装飾を取付ける。
10. 上回り完成

テンダー構成部品

パーツ名が分かりにくいため、以前掲載した写真の番号で判断していただきたい。要するに、箱は箱だけで本付けし、炭庫部分のパーツもそこだけで本付けし、最後に密封して完成させるという手順である。

まず、一旦仮組してあるテンダー上回りをすべてバラしてさびを落とし、ペーパーで接合面を磨いた。その後、飾りになるビスを先にハンダゴテではんだ付けした。
作業を1.に移し底板Aと側面板BCをビスでしっかり留めて、テンダーをひっくり返しフラックスを塗る。バーナーの火を絞ってテンダーの角だけに炎があたるよう下から上へ向けてあぶる。棒はんだをあぶったところに当てて溶かし、それを繰り返す。常に、BCの側面板が熱でひずまないように注意した。
底板と側面板が接合したら、合わせ板Dをはんだ付けする。皿ビスが分からないように削らなければならないため、はんだを多めに盛っておいた。あとからモールやらなにやらつけなければならないので仕上がりはあまり気にせず行った。バーナーでも火を絞るとはんだが溶け出すまでに時間がかかった。

次に、前板Eをビス止めしてはんだ付けする。ここまでの作業は全く問題なく終了した。
そして炭庫と水槽の仕切板@を支えるアングルをはんだ付けした。この段階で箱が完成し、真中に一本だけ控えが入っている状態になる。セントラルの設計では、水槽内部に防波板が一枚入ることになっているが、せっかく板を一枚入れるならば・・・と、先ほどつけたアングルと、底板をつないでみてはどうかと考えた。こうすることで、体重がかかるテンダーの補強になる。
防波板に底板接合用のアングルをはんだ付けし、続いて防波板をビス止めなしではんだ付けしようとバーナーで底板をあぶった。するとすぐに底板が歪みはじめた。慌てて火を止めてチェックしたが、スルメイカのようにはなっていなかった。冷めるのを待ち、ドリルで穴あけした後ビス止めしてから作業を再開した。
しかし、底板は肉厚が薄いため、ビス止めしてもあぶるとすぐに歪みはじめた。しかし底板は人目に入らないところなので構わずあぶり続けて底板とのはんだ付けを終えた。ここまでが以下の写真。

補強板 補強板

防波板と補強アングル

箱になったテンダー上回り

写真では見づらいと思われるが、防波板はアングルとつながれて底板と繋がっている。水は側面板との隙間を通り、前へ回るようになる。(昔使っていたアルミのお弁当箱のようだ・・・)底板はペコペコになっていた。台枠に載せたときに隙間ができるとまずいことになるため、裏返して平ヤスリで平らに仕上げた。それが下写真。防波板を取付けたところより前部分が膨らんでしまっている。が、とりあえず箱の形状にはなった。

裏面

凸部をヤスリで修正・・・

早速台所へ持っていき、最初の水漏れチェックをした。全く水漏れはなかった。はんだはよく溶けて流れているようだ。1.2.3.が終了したことになる。

手順4.に移り、炭庫と水槽の仕切板@に、アングル2本と、給水口、ポンプ室仕切板をはんだ付けする。給水口は肉厚もあり大型なのではんだが流れるまで時間がかかったが、特に難しいところもなく順調に作業は終了した。後部のアングルには装飾で控えをつけたが、資料不足でどのような形状になっているか分からなかった。近代機は三角形の控えになっているようだが・・・。一般的な10×10mmの真鍮アングルをはんだ付けしてそれらしく見えるようにした。

水槽炭庫仕切板

仕切板に各パーツを取付けたところ

加工が終わった仕切板@を本体に組み込み、ボルトで締め付けた。同時に、継ぎ足されている増炭庫部分も取り付けた。仮組の段階ではボルトを数箇所しか留めていなかったが、本付けなのですべてのボルトを組み付けた。全部で420本近くの真鍮ボルトが必要となり、金銭的にもこれだけで10,000円近くの経費がかかってしまった。

仕切板がすべてボルト留めできたら、フラックスを流しはんだ付けする。バーナーはテンダー外側からあぶって内側からはんだ付けする。側面板は密にボルトで留まっている為か、かなり熱をもってもひずむことはなかった。安心して順次はんだ付けしていった。

炭庫接合

炭庫底部と前板、側面板のはんだ付け

一番懸念していた密封は思ったほど大変ではなく、内側からはんだを流しているにもかかわらず、きちんと表側のボルトにもはんだが回っていた。これなら水漏れもなさそうである。
水槽は密封されたので、水漏れテストを行った。外観チェックでは漏れそうなところがなかったので、テンダー上回りをよく洗浄した後、水抜き穴2箇所をガス管に使用するゴムキャップでふさいでベランダにセットした。
水漏れテスト ボルト水もれ

ベランダにて

ボルトからの水漏れ

水を給水口から溢れるところまで入れ、しばらく置いた。各接合部を一つ一つチェックした。するとぽたぽたという量で水漏れが見つかった。前板と側面板の接合部である。さらに時間がたつにつれて水漏れが見つかった。側面板のボルト部分2箇所で、少しずつだが水がにじみ出ている。しかしそれ以外、水漏れは見当たらなかった。タンクの水をすべて抜いて、まず前板と側面板の継ぎ目をはんだ付けした。ボルトからの水漏れはごく少量のはんだをボルトの周りに流してふさいだ。再度水漏れテストをした結果、どちらも完璧に漏れは止まった。やれやれである。バーナーで派手にあぶったわりには目立った歪もなく外観は上々に仕上がった。

水タンクとしては完成したが、装飾をつけていかなければならない。最初にモールから取り付けることにした。近代機はテンダーのモールが平板になっているが、実機の8620や9600は半円柱のような素材でモールが取付けられている。いかにも古めかしいところである。ごく一部の8620は近代機と同様の平板になっていることがある。(梅小路の8630は平板だった)セントラルの8620も実機と同じように真鍮半丸棒?をはんだ付けする。(こんな素材は一体どこで手に入れるのだろう・・)

真鍮半丸棒をテンダーの形態にあわせて曲げていくことはかなり難しそうだったので、1箇所切断してあとは焼きなまして取付けることにした。切断したところはテンダー増炭部分後部の角である。

モール モール切断

正確に曲げることはとても難しかったが、まずまずの出来になった。左右のモールは後部で突合せするが、テンダー側板自体が後部中央で接合しているため、つき合わせ位置を梯子がつく場所へずらして突合せした。

前板部分の装飾がまだまだ残っているが、一応形態は完成に近くなった。

テンダー上回り@ テンダー上回りA
テンダー上回りB テンダー上回りC