2001年6月    昇圧、そして自走
機関車の目とも言えるヘッドライトは3.5インチ用が手元にあったが、今回は使用せずお金をかけてクラウンモデルのLP42を注文した。13000円。構造は直径4cm真鍮パイプにロスト製の放熱機や手すり、蝶番をはんだ付けする。反射板はアルミ丸棒をすり鉢状に磨いたものが同封されている。製作はやや面倒だったが、出来はかなり満足いくものとなった。

LP42headlight

製作中のLP42ヘッドライト

残りはシリンダーカバーや、テールライトなどがある。時間を見つけて製作する。

新崎氏にお願いしていた安全弁メクラプラグが届いたため、いきなり水圧テストを行ってもよかったが、安全弁の動作チェックも行なった方がよいため、潅水を満タンまで入れハンドポンプで水圧テストを施した。

いきなりハンドポンプをぐいぐいと動かすと、あちこちの配管から水が噴出した。まず一箇所目は水面計。水面計はガラスを上下で固定するプラグの中心が揃っていなければ水面計ガラスに隙間ができ、そこから水が漏れてしまう。一応あわせたつもりでいたが甘かったようである。この時点でガラスを抜取り再度中心を出しておけば良かったのだが、増し締めするためガラスを締め付けているナットをグイと回すと水面計は簡単に割れてしまった。あせるとこうなってしまう。

OSに追加注文して届くまでの間、しばらく作業が中断してしまった。中断している間に丸棒から水面計取り付けゲージを製作して準備した。

部品が届いたあと、もう一度水面計を取り付け、テストを行なった。今度は煙室の中から水が出ている。やはり、ブロワー取り付け部からの水漏れであった。狭い煙室の中で締め付けた為か、締め込みが甘かったようだ。今度はスパナではなく、プライヤーでしっかりと締めこんでみた。そこでテストを再度行なったが今度は水圧が見る見る上がっていった。4気圧を超えたところで、安全弁からゴボッと水が出たため、安全弁のチェックはこれでよしとなった。

安全弁メクラ栓

安全弁メクラプラグ

メクラプラグは丸棒を加工して作られていた。新崎氏によると手元に六角棒の手ごろなサイズがなかったということだった。丸棒で加工されていたため、頭にスリ割をいれて締めこむことができるようにした。

部屋でこれ以上作業を続ける必要もないので、機関車を部屋から降ろすことになった。機関車の重量がどのくらいか測定はしていないがおよそ80キロほどと予想された。これを1人でマンションから降ろすことは不可能なので、菓子折り片手で知人に頼み、3人がかりで機関車を下ろした。前2人後ろ1人で楽勝というところだった。

日ごろの足で使用しているマツダボンゴフレンディに機関車を積んだが、3列シートのため、機関車の全長がやっと納まるくらいぎりぎりだった。8620を運ぶ場合には3列目のシートは外さなければならないだろう。機関車の前後にダンボールを挟むとちょうど機関車が動かなくなるので、このまま日本庭園鉄道の機関庫まで運ぶことになった。
ワゴン車を買うときは、跳ね上げ式シートを選んだ方が賢明ということがわかった。


日本庭園鉄道で、勝又氏立会いの元、最後の水圧試験を行なった。4キロちょっとで安全弁が作動したので、8キロまで昇圧した。チェックバルブ取り付け部から少し水が滲んだがほぼ8キロを維持した。懸念された自動車エンジン用ガスケットだが、漏れは全く見られない。バスコークのコーキングは素晴らしいもので、心配していた継ぎ手、ナット等からの水漏れも全くなかった。

記念撮影して、火を入れる準備をした。いよいよ火入れである。

水圧テスト

8キロ!

火格子が揃っていなかったため、クラブの仲間が所有する火格子を借りてセットした。灯油をたっぷりと含ませた焚き付け木材を火室に敷き詰め、小さめの石炭を少しくべてブロワーを煙突に乗せる。
その後、勝又氏のライターで火室に点火した。火が大きくなってきたらどんどん投炭する。
圧力が上がるまでの時間を利用して、軸箱、ロッド、クランクピン、クロスヘッド、加減リンク、軸動ポンプエキセントリックに機械油をさし、運転用客車を用意する。スチームオイルをオイルポンプに貯めて、手動でハンドルを何回か回し、シリンダーへオイルを送ってやる。
2キロまで圧力が上がったらブロワーを外し、ブロワーバルブを開ける。ここからは自力で通風を得られるため、あとは安全弁が吹くのを待つだけとなる。

安全弁は突然吹いた。ハンドポンプで注水して運転客車を連結する。足でブレーキをかけて加減弁を少し開けシリンダーを与熱する。ここでひとつ問題が見つかった。ドレンコックの前側、新しい方のドレンコックが排水しない。

加減弁を開けると煙突から凝固水を排出しながら機関車は前進した。ここで2つ目の問題点が見つかった。バルブギアの調整が甘いせいか、動きがギクシャクしている。バルブゲージを利用してバルブトラベルをチェックしたが、どうやら右側ピストンバルブの軸が緩んでいるようだ。前端梁を外してピストンバルブを前から抜取り、ピストンとシャフトを締め付ける芋ネジを増締めした。ピストンバルブを戻し、もう一度加減弁を開けると今度はとてもスムーズに動き始めた。最後に一番懸念されていた軸動ポンプの配管銀ロウ付けだが、ここも水漏れは全くなくきっちりボイラーに給水している。

ついに完成だ!

動きがギクシャクしていた「初めての自走」を動画でご覧いただきたい。

 

自走

写真をクリック! 695KB 再生15秒 

さて、振り返ってみると長かったような気もするし、短かったような気もする。毎日夢中でわき目も振らず製作に取り組んできたが、全く経験したことのないライブスチームを理解することについてとても勉強になった。すでに8620の部品は手元に届いているが、ざっと説明書と品物を見ても、「ここはこうした方がよさそうだ・・・・」と、自分なりの見解が持てるようになった。散々失敗もしたので、8620製作の前章としては申し分ない経験もできた。そして、徹底してOSの機関車をばらしたことは「夢の全自作」に一歩近づいた気がした。ライブを始めてみたい・・・と考えていきなりOSの機関車を入手ができたことは、本当に恵まれていたと思う。

数ある趣味の中でもライブスチームは1人で楽しむことができない趣味といえる。超マイナーから来る情報不足や、工作場所、部品の入手、加工、どれをとっても1人でやることは至難である。クラブや家族の協力がなければ到底始めることができない趣味である。

初めから動く可能性が極めて高いOSの機関車をできる限りお金をかけずに復活させる、というそれほど難儀でない工作であっても数え切れないくらいの人に協力していただいて完成に漕ぎつけた。この場を借りて皆様に御礼申し上げます。

さらに、ロコを持たない新入会員に機関車を・・・と奔走していただいた日本庭園鉄道オーナー、勝又厚史氏とワダワークスの和田耕作氏、数え切れないほどの質問メールにいつも丁寧に回答をしていただいた「模型蒸機の部屋」の渡邊氏、奇抜なアイデアと強烈な熱意で暖かく応援していただいたC5557号の横田氏、ボール盤を提供していただいたニイザキモデルエンジニアリングの新崎氏、メーカーの垣根をこえてライブスチーマーに部品を提供し続けている動輪舎社長 矢作氏、そして私のもっとも身近な先輩として助けていただいた中川氏には、心からのお礼をもうしあげます。本当にありがとうございました。

 

どうだ!

もうひとつ!

 

 

 

運転会で会いましょう!

おまけに!

 

 

 

 

 

追伸:

ナンバープレートはどうしようかしら?


それからもうひとつ、セントラルから主台枠に続いて、予定通りテンダー上回りが届いた。今後2回は台枠系ではなくテンダー部品が配布される。先にテンダーが完成するが、置き場所を考えてもその方が良いような気がする。


最後に、渡邊精一氏著「ライブスチーム」が誠文堂新光社より復刊された。ありがたい限りである。値段は22,000円。