2000年11月    「落胆、そして全検開始」

ああ、今月はまず残念な結果から報告しなければならない。セントラル鉄道より電話があり、「8620の頒布は2月にずれ込む、申し訳ない」と言う連絡を受けた。予想していたとはいえ、やはり残念だ。ただ、ひとつ良かったことは、セントラル鉄道が現在頒布を続けている機種が、順調であること。B10については、2年でボイラーを残すのみ、C56もテンダーが終わって、ボイラーのみという状況だ。ここからが長いという意見もあるようだが、B10は5月のライブスチームショウで頒布が始まり、確かに、はやいと私は思うので、「まあしょうがない」とする。

セントラル鉄道の8620は2台残っているそうなので、「この機会を逃したくない」場合には注文を受け付けるという。


先月報告できなかったが、静岡県磐田郡福田町に「はまぼう公園」と呼ばれる公園があり、ここにも庭園鉄道が敷設され人気をよんでいる。はまぼう公園は大田川の河川敷を利用しているため、敷地が広く、レイアウトも一周400mとロングランが楽しめる。「とれいん」6月号で横田氏のC55が特集されたときに使用された会場でもある。私は東へ行っても、西へ行っても80キロ以内に庭園鉄道があることになるので、本当にめぐまれていると思う。

当日参加していた機関車

C55

9600

C60

C55

この他にもOSのS6、中川氏の8620、3.5インチのD52、フリーの機関車も参加していた。「はまぼう公園」は起伏があり、雨も降っていたため、勾配で立ち往生するところがしばしば見られた。全部の機関車を紹介できないのが残念。

こうしたイベントに参加すると、私もはやく自分のロコで参加したいと思う。


イベントに参加して気持ちが盛り上がったところで、前月我が家にやってきた「T-5」に全検を施すこととなった。手順として、

「分解・洗浄」→「部品リスト作成」→「予算編成」→「変更点の確定」→「組み立て」→「試運転」

という手順になる。ただ単にくみ上げたのでは面白くないので、どうせ2月までハチロクは来ないこともあり、各種変更を加え、且つ勉強もかねて製作することとする。

ライブスチームの製作にはいろいろな工具が必要になる。私はボール盤しかもっていないが、全検にはこれで十分。クラブの工作室に小型旋盤とミニフライス盤が導入されたので、困ったときには出かけて工作すれば解決する。

工作機械のほかに、今後必要になると考えCADも勉強することにした。CADなんぞは使ったことも見たこともなかったが、真木氏のホームページで紹介されているCB−CADを無償ダウンロードして、テキストを購入した。ダウンロードは無料でできるが、一時使用で期間が限られている。本格的に使用する場合は9800円振り込むことでパスワードが交付され、永久使用できるようになる。テキストはやや高く3600円。テキストにもCD−Rが添付されていて、すぐに使用することができる。

実際に使用してみたところ、非常に使いやすい。テキストも親切で、分かりやすくできている。例題も掲載されていて、そのテキストには「ロケット号」までついていた。まだまだ機能を使いこなしていないが、最初にとりくむCADとしては申し分ないと思う。


今回譲り受けた機関車はテンダー機に変更されていたが、テンダーがない。したがってテンダーの新製には、テンダー台車が必要となり、部品代が高くつことになる。タンク機関車はタンクを新製することで安くできる。今回はタンク機で復活することで決定。どちらにしろ、運転台車は必要になるが当面クラブの客車に乗ることで我慢。

機関車を調査し、大まかに不足部品リストを製作した。

部品名 部類 現況
ドレンコック エンジン 破損
ドレンコックてこ各種 エンジン 欠品
ブレーキ系統全部品 ブレーキ 欠品
水タンク外左右 タンク 欠品
水タンク内左右 タンク 欠品
水タンク配管 配管 欠品
水タンク蓋等周辺部品 飾り 欠品
軸箱控ボルト 軸箱 破損
圧力計 計器 欠品
圧力計配管 配管 欠品
水面計一式 計器 欠品
蒸気分配箱 配管 欠品
蒸気配管 配管 欠品
自動連結器 カプラー 3.5インチ用使用予定なし
前照灯 飾り 3.5インチ用使用予定なし
ウォーターポンプダストブーツ ポンプ 破損
ウォーターポンプOリング ポンプ 再使用不可
軸動ポンプピン ポンプ 欠品
灰箱てこ 火室 欠品
火格子 火室 欠品
オイルポンプ配管 配管 欠品
オイルポンプ蓋 ポンプ 欠品
運転室ステップ 飾り 欠品
加減弁ガスケット ボイラー 再使用不可
運転室外装その他 飾り テンダー機用
その他    

本当に大まかなリストだが、どちらかというと細かい部品が多い。欠品が多いため、全部を注文すると費用が大きくなる。手持ちの工作機械で製作可能なものはできる限り新製してみようと思う。設計図がないため、寸法は実測で行なうしかない。運転室、外装、タンクは製作に挑戦し、できそうなものはできる限り製作する。水面計や蒸気分配箱、圧力計は現在の私の技術では難しいので部品を注文する。私の場合は糸鋸もまともに使ったことがないので、練習するには申し分ない。

T-5は動輪直径が11センチと小さいため、脱線するとそのダメージは大きい。上記リストの中でも破損しているものはほとんど脱線が原因で起きたもので、下回りの部品に集中している。


作業開始にあたり、部屋をリフォームした。工作機械はボール盤だけだが、金属加工にはキリコが発生する。おまけに、中古の機関車はドロと油汚れと、においがすごい。床を汚さないように、1.5ミリのベニヤを床に引き、用途廃止になった音楽機材を実家の倉庫に運び、面積を稼ぐために大型の本棚を購入した。工作台がどうしても欲しかったが、工具商で購入すると高価なので、しばらく中古を探してみることにした。洗車用の脚立に木製の板をボルト止めして、アルミのアングルをレール代わりにして機関車製作台とした。なんともビンボーだが、しょうがない。
リフォーム前 リフォーム後
9月の部屋と比べても恐ろしく汚くなってしまった。壁の養生をしてからでないとボール盤は運転できない。さらに壁にもベニヤを立てる予定。

分解して取り外した部品をプラスチックのケースに入れて灯油で洗浄した。灯油は揮発性が悪く、しばらくはベトベトする。自動車部品などはガソリンで洗浄することが多く、こちらのほうが望ましいが、ガソリンは金属製のタンクでなければ販売してもらえない上、昨年使った灯油がたんまり残っているので、やむを得ずこちらを利用した。使い古したハブラシを用いてひたすらごしごしやる。

真鍮の部品に関しては、ケミカルを使用した。近所の日曜大工用品店で購入した錆取りスプレー。ムース状になっており、台所で砲金と真鍮の部品を集めて洗浄した。紫色の液体が流れてすごい匂いがしたが、部品はピカピカになった。


はまぼう公園の運転会で、「とれいん」6月号で特集された「C55 57」号の作者、横田氏にお会いすることができた。
横田氏のC55は本当に「ため息が出るほど美しい」もので、「とれいん」に記述されている「3気室」の汽笛の音がとても印象的だった。
いろいろお話を伺うことが出来たが、大変気さくな方でライブスチームは「選ばれた人」のものではなく、「熱意」でたいていのことが乗り越えられるよ、とアドバイスを受けた。
横田氏とお話をしていると、私のような知識・技術がない人間でも好きな機関車を好きなように作ることができるような錯覚を受けてしまう。ある種のオーラともいえるエネルギーを放つ魅力的な人だ。

クロスバイス

そんな横田氏から私はアドバイスとともに素晴らしいプレゼントをいただいてしまった。それはクロスバイスで、「多少のミーリングはできると思うよ」とボール盤しかもたない私にありがたい道具であった。ひたすら「感謝」。