逆転機


この機関車はガス焚きしかできないタイプのボイラーが搭載される。投炭、火床の状況確認、焚き口開閉による二次空気の取り入れ等、石炭焚きならではの楽しみは得られないだろう。

運転する上で操作系に楽しみを得たいと考え、逆転機はレバー式を搭載した。コッペルの実機は当然レバー式の逆転機を備えている。国鉄で採用されているネジ式逆転機は、工作こそ難しそうに見えるが、すくなくとも設計においてはレバー式はかなり面倒だった。

というのも、ネジ式の場合はニュートラルも含めておおよその移動量を計算しておけば、あとは自分でハンドルを回して操作できる。しかしレバー式は前進フルギア、ニュートラル、後進フルギアを計算で求めておかなければならない。

梃子の半径による移動量とレバーの比率をあちこち求めてみたが、工作の蓄積誤差もあるようでイマイチ上手く行かない。

「生きた蒸気機関車をつくろう」を読むと現物合わせでノッチを刻んでいる。それでは・・・と私も現物合わせで工作することにした。ただし、ニュートラルだけはあらかじめノッチを刻んでおいた。


ようやく機関車全体の図面が掲載できるようになってきた。逆転機の前進後進移動量はリフティングアームとレバーシングアームの比率で変わってくる。リフティングアームとレバーシングアームは共通部品なので比率も一緒。逆転梃子の比率はこれらのアーム半径の三倍で設定した。ちなみに数値を入れておくとリフティングアームは半径40mm、逆転梃子は120mmである。
図面では修正していないが、レバーシングアームとリーチロッドは90度に締結されるように位置を決めておかなくてはならない。リーチロッドのかわりに書いてある直線がレバーシングアームよりも長くなっているのはそのためである。

この半径120mmはリーチロッドとの結合点の寸法になるので、実際のハンドル位置はさらに高いところになる。図面を書き込んだ段階でかなり大きな逆転機になっていた。

A3用紙に逆転機をプリントアウトし、コッペルの運転席に搭載してみると、大きいことは確かだが大きすぎることはなく操作性も悪くなかった。

そこでこのサイズで工作することにした。


これらの図面を元にレーザーカットを依頼し組み立てた。

上写真はレーザーカットで仕上がったパーツを酸洗いし、乾かしているところである。酸洗いを終えた後は写真のようにすぐに錆び始める。左写真の上には逆転機の台座が写っている。台座には扇形受を取り付けるためのスリットが切ってある。ここに扇形受を垂直に銀ロウ付けし、一体にする。

スリットがきってあっても台座と扇形受が垂直に仕上がるという保証はないので、上右写真のようにピンを通して、これをリファレンスに台座を銀ロウ付けした。ピンをつけておくことで正確な取り付けができる。

写真に残さなかったが、この銀ロウ付けはかなり難航した。逆転機を構成するパーツはすべて4.5mm鉄板で、かなりの熱量が必要だった。いつもは差し付けしているが、途中から置き付けに変更して何とか仕上げた。室内で銀ロウ付けするにはバーナー径が小さいものしか使えないので大変だ。


レバーは写真を撮り忘れてしまったので、文章だけの説明になるが、同じ板厚4.5mmで製作した。手で握るハンドル部分は真鍮丸棒を切削してつくり、レバー本体に銀ロウ付けした。

レバーには掛金ハンドルがつく。この部品は設計が面倒だった。掛金ハンドルを握ったときのリフト量とクリアランスを上手く設計できないのである。
これについても組み立てた段階で現物仕上げにした。

材料は1.5mm真鍮板で、糸鋸で切り出した後、穴あけ・曲げ加工して取り付けた。掛金ハンドルのバネは逆転レバーの板厚4.5mmよりも薄い4mm径の物を使い、扇形受と逆転扇形のあいだに納まるようにした。逆転レバーの板厚は厚すぎるぐらいが丁度よいかもしれない。


最後にノッチの刻みである。最初に書いたとおり、ニュートラルは設計段階で刻んでおいたので、先に前進フルギアに印をつけた。

次に後進フルギア・・・としたいところだが、オイルポンプの動力を加減リンク上部からアームを使って得るため、フルギアにならないようにしておいた。フルギアにするとアームが干渉するのだ。
・・・・といえば聞こえがよいのだが、単なるうっかりミスだったりする。まあタンク機関車の場合、バックで性能を追求する必要もないのでこれでよいだろう。

マジックで印をつけて、帯鋸でスリットをいれる。これが結構面倒だったりする。掛金ハンドルの板厚が1.5mm。帯鋸はそれよりもちょっと薄いので、最終的には細い角ヤスリをつかって仕上げた。8620のドレンコックを削るときに使ったヤスリである。

前進フルギア、後進フルギアの位置を決定したら今度はそれぞれの中央にさらに刻みを入れておいた。

ノッチの刻み入れ

逆転機完成

さあ、これでエアテストの準備ができたぞ!