煙突


煙突は衣裏鉄車両から購入した。煙突とボイラーの締結は頭の痛い問題で、ボイラー外径と煙突のRがきっちりと一致していなくてはならない上に、前後左右それぞれの方向から見た垂直度、加えて煙突中心とブラストノズル中心まで一致していなくてはならない。

国鉄型のような煙突が短いものは多少傾いたとしても、作った本人以外分からないものだが、コッペルのような長い煙突を持つ機関車は厄介である。傾いていると一発で分かってしまう上に、作品の完成度に影響する。

特に鋳物から削りだす場合はフライカッターによる切削が一般的で、仮にその方法を取ったとしてもセットアップは慎重を要し、かなり難易度の高い工作になる。

この点、Y氏は新しい素材を使い見事に仕上げられた。これは今後のライブスチームの煙突工作に大きな影響を与えるほどの新技である。

私はフライカッターによる切削はフライス盤を持っていないのでできない。

そこで失敗を覚悟で原始的なヤスリによる切削?にした。というよりせざるを得ない。当然失敗する確率が高いので2個購入した。


失敗することが前提なので、安心して?取り掛かれる。

まずは半丸ヤスリでごしごしとバリを取り除き、適当に仕上げる。衣裏車両の煙突はすばらしい仕上がりで、特に裾部分の複雑なRはそのままでも取り付けられるほどの精度で仕上がっている。この鋳物はオススメである。

削っては煙室に乗せて、削っては煙室に乗せて前後左右から様子を見た。まだ傾いてはいない。

加工前のボイラー取り付け面

大胆な・・・

最終的には上右写真のようにケーシングにペーパーをのせてこすり付けて調整した。ペーパーにあたっているところはヤスリで削り、これを繰り返していくと次第にボイラーにフィットしていく。思った以上に上手く行き、まず第一段階をクリヤーした。技術よりも鋳物のよさにずいぶん助けられた。写真こそ残っていないが、ヤスリで削った部分はそれほど多くない。


続いてボイラーとの締結穴空けである。

失敗を考えて、穴を共通化することにした。煙突に穴を開けてからケーシングに移しあけると、煙突がお釈迦になった場合、ケーシングまで駄目にしてしまうので、穴あけジグを外注した。

レーザーで煙突接合面にぴったりの楕円を抜いてもらい、さらに6分割ショット穴、およびボイラー外径に合わせてR加工してもらう。これをジグにして煙突にまず穴を開けた。

←きれいに等分されています

 

煙突に穴が開いたら、今度はジグを煙室側にとりつけ穴を写し開ける。
ジグには表裏ともセンターラインを罫書いておく。こうすることで煙突に対しても、また煙室に対してもまっすぐ正確な位置に穴があけられる。
実際には煙突にジグを取り付けるのはかなり慎重に行なわなくてはならないが、ジグにも煙突にもRがついているので、適当にコンコンと振動を与えてやると中心が出る。この状態でジグがずれないようバイスで固定すれば問題ない。

また、煙突穴が正確に六等分できる上に、煙突を別のものに付け替えたとしてもジグが残っている限り同じ位置に取付できるわけである。


残念ながら、このやり方の欠点は穴を裏から開けるのでボルト穴が垂直に開いてしまうことである。

取付には鍋ビスを使い、まずは裾の穴を皿モミした。ボール盤に皿モミカッターをとりつけて適当に煙突を押し付ける。さらに、旋盤で鍋ビスの裏側をテーパーに削っておいた。写真のような状態になる。

煙突は鋳物なので、黒皮をはがすためにヤスリで削った。煙突出口(上側)を三つ爪チャックに咥え、裾側をライブセンターで押してやり、あとは低速でまわしながら平ヤスリでゴシゴシやる。こんなやり方でも写真のようにぴかぴかに仕上がる。削る前の写真と比べていただきたい。

削る前の鋳肌(ライトで強調しております)→

ついでに煙突の長さを25mmカットした。取り付けた印象で長すぎた感があったことと、運搬用ケースへの収納を考えてである。煙突は運転台の最高部からさらに25mmほど長くなっている。カットしたことで煙突上部のリングがなくなってしまった!

鋳物煙突は想像よりも簡単に取付できた。工作機械は便利だが、ヤスリ加工でもできないことはない。