煙室戸−A


ライブスチームの工作全般であまり難しいと聞かないところだが、やってみると難しいというところがいくつかある。

煙室戸の蝶番はそのひとつである。愛読している「模型蒸機の部屋」を参考にしたが、工作はかなり難しかった。煙室戸自体の形状が複雑な上、同芯円の精度、閉めた時の密閉度が要求される。煙室戸が中心に来ていないと気持ち的にも落ち着かない。

煙室戸受けリングと煙室戸の芯出しは煙室戸の裏側を削ったことで自動的に出せるようになったが、遊びを作らなかったことが結果的に工作を難しくさせた。

煙室戸腕もレーザーカットで切り出してあるので、これを焼きなましてまず先端だけ穴あけし、煙室戸にビス止めしながらムリヤリRに沿わせてみた。沿わせた後はCクランプで固定してあらかじめあけてある煙室戸穴よりドリルを通して穴を写し開ける。この時点で注意することは煙室戸腕の平行度だけである。

まずはうまく行った。


続いて煙室戸ハンドルである。煙室戸ハンドルは3.2mm鉄板からレーザーでお菓子のスピンのように切り出してあるので、ヤスリを用いて旋盤でR付けをする。

←ハンドルAのつかみ棒

実機の煙室戸ハンドルの構造は複雑である。たいていハンドルは2個ついている。とりあえずハンドル@、ハンドルAとしておこう。

片方は矢尻をかんぬきに引っ掛けるためのハンドル@で、こちらは軸を回転させられるかわりに締め付けることができない。つまり矢尻の軸方向は拘束できないが、周方向は拘束できる。

もうひとつのハンドルAは締め付けることはできるが軸を回転させることはできない。つまり軸方向は拘束できるが周方向は拘束できない。
前者は穴が角穴に加工されており、後者はネジが切ってある。

まあ、本物はそうなっているということである。

工作が面倒になるので両ハンドルともネジにした。二つのハンドルをとりあえずロックしてかんぬき穴と矢尻の位置を合わせ、その後片方のハンドルで煙室戸を締め付け、最後に残ったハンドルでロックをする。多少開閉は面倒になるが効果は変わらない。

上下写真はロックハンドルのテーパーを削りだしている写真である。この後切り落とし、旋盤で削りだしたパイプと銀ロウ付けして完成。写真は撮り忘れたのでなし。矢尻も写真を撮り忘れたのでない。一応説明しておくと、レーザーカットで4.5mmの板を三角に切り出し、底辺に穴をあけて3mmシャフトを銀ロウ付けし、最後にダイスでネジを切る。


さて、最も難しい蝶番の加工である。

ここまでの工作で、煙室戸と煙室戸受けはハンドルで固定できる状態になっている。写真は煙室戸を裏から撮影したもの。煙室戸腕が飛び出しているのが確認できる。

煙室戸腕と蝶番の高差→

煙室戸腕と蝶番の位置関係だが、蝶番は煙室戸受けリングに取り付けられ、煙室戸腕は煙室戸の最も薄い4mm厚の高さに位置する。そのため、蝶番のシャフトが貫通するパイプはそれぞれの高さに合わせて位置をずらして取り付けなくてはならない。図面で掲載しておいたがその高さのズレは4mmである。

煙室戸受けリング側は角材に穴を開けたものを銀ロウ付けし、煙室戸腕はイモ付けすることにした。煙室戸腕は簡単に曲げることができるので取り付けた段階で高さが違ったら無理やり曲げてあわせることにした。

前回の記事に書いた偏心していた没フランジリングをジグとして再利用した。これに蝶番をビス止めして写真のように仮固定し、銀ロウ付けする。

煙室戸腕はイモ付けになるので、真鍮パイプを丁寧に並べて銀ロウ付けした。小さいものをイモ付けするのはなかなかテクニックが必要だが、仕上がりは満足いくものになった。さすが銀ロウ付けだけあって強度も全く問題ない。

しかし、できあがった煙室戸腕と蝶番をシャフトで組み立てると、やっぱり上手く行っていなかった。蝶番側の軸受けがわずかに傾いていた。

銀ロウ付けをやり直すのも面倒だったので、蝶番の取り付けビス穴3mmを3.5mmに拡大して、位置決めしてからねじ込むようにして完成させた。これが上右写真。開閉してみてもきっちり蓋が閉まる。


煙室戸は熱のかかるところだが、耐熱塗料にする必要はない。これは私の経験だが、ボイラーケーシングだろうと煙突だろうと通常の塗料でまず問題ない。好みで使えばよいと思う。

8620の塗装で使おうとしていたオキツモ(耐熱塗料唯一の半つや黒)が大量に残っていたので、今回は煙室戸と煙室、煙突は耐熱塗料を使うことにした。機関車全体はつやありで仕上げ、煙室関連は耐熱のグレーがかかったつや消しとなる。うす塗りしないと仕上がりが悪くなる塗料である。

塗装したとたん、煙室戸の仕上がりがまだまだなことが判明した。段々に削りだした後が残っており、バイト跡も残っている。
もう一度チャックして240番の布ヤスリでひたすらこすり続けた。顔が映るぐらいまで磨き上げて再度塗装した。

それでもまだ跡が残っているが、現状の私の技術では写真が限界。やはり逆Rになっているところは跡が残っている。煙室戸腕の取り付け穴を先にあけてしまっていたこともマイナスに作用した。
塗装を終えた後は台所へもって行き、不要な(不要ではなかったが結果的に不要になった(笑))フライパンで焼き付けた。焼付けが終わるとさらにグレーがかかったような機関車らしい色になる。

これで煙室戸完成。塗装第一号。