バルブギア−A


残りのバルブギアを仕上げる。

まずはリータンロッドから。リターンロッドはやや面倒な工作になる。エキスパンションリンクとの結合がフォークエンドになるからである。基本的な工作方法は「ライブスチームの工作室」のY氏と同じだが、私はディスクサンダーやグラインダーを持っていないので鋸で仕上げた。

グラインダーは安いから購入したらどうか?というアドバイスをよく頂くが、私の場合はお金の問題ではなく、騒音と作業場所の問題で買っても使えないのだ。私の部屋は一階でベランダで火花を散らそうものならすぐに他の住民からクレームを受けることになる。
一方、部屋で行なえば砥石が飛び散って大変なことになる。

環境の問題は導入できる機械を制限してしまうのである。しかし・・・これがあったら便利だろうな・・・。

面板で削る

ドリルで底をR加工する

まずはロッド端部の穴にボルトナットを入れて仮固定した後、片方の端部に2.3mmの穴あけタップを加工した。その後、リターンロッドを面板に取り付け、所定の厚さまで削る。(上左)
削り終わった一方を短くカットしたあと位置決めビスを植え込んで銀ロウ付けした。Y氏とはやや作業手順が異なっている。
銀ロウ付けの祭には穴にシャフトを通しておき、ビスで固定する。こうすることで穴位置がずれないわけである。上右写真で位置決め真鍮ビスの跡が確認できる。
先にカットを行なった理由は鋸の傷をできるだけつけたくなかったからである。

銀ロウ付けした後はフォークの底をRで仕上げるためにドリルで加工する。あとは鋸で穴を繋いでヤスリで仕上げる。

工作記を割愛するが、コンビネーションレバーとユニオンリンクの結合点も同様の工作で仕上げた。

余談だが、このリターンロッド穴加工で腕を怪我したのである。いかにホームページの工作記が遅れているかご理解いただけると思う。事故のことをご存じない方はリンクを参照のこと。


続いてリターンクランクである。こちらは簡単な工作である。黒皮を酸洗いで落とした後、端面に締付用のネジ穴を開ける。板厚が4.5mmなので2.6mmの長ネジを使用した。工作がうまい人なら3mmでもできるだろう。

リターンクランクとの結合はロッドを圧入した。ロッドの抜け止めはシャフトの端面にネジ穴をあけてディスクをはめて行なう。サイドロッドの抜け止めと同じである。写真で見える丸いパーツがそれである。ちょっと板が厚いが・・・。

余裕ができたら作りなおそう。


さらにラジアスロッドである。前回、エキスパンションリンクと結合する箇所の工作は終えているが、問題はここから前である。オリジナル設計ではリターンロッドと同様の形状のパーツを銀ロウ付けすることになっている。
ラジアスロッドは6.0mm平鋼をレーザーカットして6.0×4.5mmの角材にしたものである。

この角材を、コの字型素材(バルブギア−@を参照)に平行度・直角度・距離を正確にあわせて銀ロウ付けする技術が必要になるので、あっさりと設計変更した。
6.0×4.5素材の端面にガイドのロッドを通して差し込むことも考えたが、穴あけ位置がずれて失敗した。

レーザーカット部品はカット面に焼きが入ってしまっていることがあり、端面に穴を開けるというのは結構難しかったりする。とくに今回のように6.0mm平鋼をレーザーカットし、6.0×4.5mmの角材作った場合などはその端部にが非常に固くなっている。

ラジアスロッドを丸棒にして、端部を汎用ロッドエンド(フォークエンドとも言う)を使用した。これにより、エキスパンションリンクからの距離を調整することができる。下右はコンビネーションレバーだが、本来はラジアスロッドと締結される上側もフォークになっていなければならない。

ラジアスロッドのロッドエンドは右コンビネーションレバーの上から二つ目の穴に締結される。

完成したラジアスロッド

コンビネーションレバー

しかし・・・見栄えはめちゃめちゃ悪い!時間ができたら角材の端面を丸に削って作り直そうと思うが、まずは完成目指して一直線。


さて、これらのパーツを締結するピンであるが、私は全てシャフトにネジを切りナット止めにした。私にとって一番簡単な方法がこのやり方である。ナットはネジロックを少量塗って使う。
またクロスヘッドの締結に使用した方法であるが、8mmの穴に外径8mm・内径6mmのパイプを使い、これをM6のボルトナットで締め付ける。ナットはパイプの長さ以上はしまらないのでスムーズに動くというわけである。パイプを黄銅などにしておけば磨耗にも対応できる。

ピンひとつとっても人それぞれいろんな方法があることに驚く。

まず、割りピンとワッシャーで締結する方法だが、これが一番本物っぽくてかっこいい。
しかし、私は今のところ小さな割ピンを簡単に入手することができない。大量に買っておけばよいのだろうが、分解するごとにムダになることは確かである。
また、3mmのピンに1.5mmの穴を開けるのは結構大変である。ジグを作らなくてはならない。穴の深さによって数種類になる。実はこれが面倒で8620のブレーキが完成しないのである。合計18のピン穴あけをしなくてはならない。

Eリングは旋盤加工が必要になる。Eリングの溝は細いので専用のバイトを購入するか、折れた鋸をグラインダーで成型してさらにはホルダーを自作する必要がある。これにはフライス盤が必要だ。
一度ホルダーをネジで組み立てたものを使ってみたがあっさりと駄目になった。
またEリングは取り付け・取り外しが思ったよりも難しい。

シャフトにネジをきるやり方は私が旋盤と主軸手回しハンドルを持っているから簡単に感じるのだろう。工作機械を持たない人には勧められない。

自分の持っている機械と素材の入手を考えて作るのがよいだろう。


残りはリフティングアームである。これは9mm鋼であらかじめ作ってあるので、穴をリーマ加工して周り止めの芋ネジを植え込む。これで一気に組立である。バルブギアはレーザーカットの恩恵が大きく、実に簡単な工作で終わる。数箇所の銀ロウ付けとネジ穴だけである。

国鉄型のロッドは溝加工があるので簡単には行かないと思うが。

さて、組み立てた画像である。

ラジアスロッドが丸棒というのは・・・気がひけるが、ここはちゃんと作り直そう。コンビネーションレバーとバルブスピンドル、コンビネーションレバーとラジアスロッドが汎用ロッドエンドで締結されているのが確認できると思う。汎用ロッドエンドは8620の工作で紹介したミヨシ製である。忘れた方はリンクを参照。

サイドタンクはとりあえず板の状態で仮乗せし、リフティングアームとのクリアランスを確認したところである。クロスヘッドからユニオンリンクを繋ぐピンの工作は割愛したが、ちょっと複雑な構造のピンになっている。しかしネジで固定している点は変わりない。