バルブギア−@


バルブギアの工作を紹介する上で、部品の名称をすべて英語呼びにした。あらかじめご了承いただきたい。

ロッドのうち、サイドロッド・メインロッド・クロスヘッドは工作を終えている。
残りの工作のは、エキスパンションリンクから始めることにした。

実はバルブギアの工作が後回しになったのは理由がある。オリジナル設計を変更し、コンビネーションレバーとラジアスロッドの締結を市販の汎用ロッドエンドを使用して工作を簡略化するためだ。ロッドエンドを利用するとコンビネーションレバーの工作が簡単になる。

しかし、元設計のコンビネーションレバーはバルブスピンドル中心線から外側に板厚の半分オフセットしており、ロッドエンドを利用するとバルブスピンドル中心線とコンビネーションレバーの中心線が一致することになるのでバルブギアの位置関係が変わってきてしまう。

クロスヘッドとの干渉、リターンクランクとの干渉、動輪の横動などを慎重に検討しなくてはならず、時間がかかってしまったのである。

バルブギアを上から見た図というのは作図した本人しか判別できないだろうが・・・一応掲載しておく。

上面図

図はコッペルのタンクから前を上から見た図である。下半分にはバルブギアが書き込んであるが、上半分には書き込んでいない。上はタンクとの位置関係を確認するためにサイドタンクが書き込んである。

まあ・・・要はこうやって確認しましたということだけである。注目は加減リンクの部分(灰色の破線があるところ)で、モーションプレートとの間に隙間が空いてしまっている。この隙間が設計変更で生まれた差である。隙間には真鍮のブッシュを入れて対応する。数値ではおよそ5mm、エキスパンションリンクが外側になった。


エキスパンションリンクは非常に難しい工作が要求されるが、レーザーカットを利用することで非常に簡単になる。見栄えも申し分ない。何より、設計の精度がそのまま反映されるのでバルブギアの精度が格段に向上する。

工作は以下のような部品をカットし張り合わせる。すべり子も同時に抜いておく。下部品図の真ん中はエキスパンションリンク裏板だが、下部をリターンクランクのRよりもやや大きめにカットしておいた。

             

エキスパンションリンク表部品と裏部品は発注の段階でショットマークを打っておき、それをガイドにビス止めした。これにより分解が可能になり、耳軸の銀ロウ付けが簡単になる利点がある。

工作は非常に簡単だったが、いろんな理由によりずいぶん失敗した。最初は発注の段階で板厚を間違えて指定し、次は設計変更、そして銀ロウ付けの失敗・・・etc。6個も作ったということはここだけの話にしておこう。もちろん外注費用がかさんだことはいうまでもない。

今でも部品箱には失敗したエキスパンションリンクが転がっている。

写真は完成したエキスパンションリンクである。作業は磨きとタップたてだけ。コの字型の部品はラジアスロッドの一部である。コの側面に穴が開いており、ここにロッドを差し込んで銀ロウ付けする。写真はロッドをロウ付けする前の状態である。軸にすべり子がはまっているのが確認できるとおもう。


リフティングアームとラジアスロッドの締結はなかなか難しい。リフティングアームは回転運動、ラジアスロッドは往復運動である。今回は真鍮パイプをクロスして組み立てる。Y氏の設計が光るところである。
構造についてはOS井笠コッペルの写真を掲載するので参考にしていただきたい。バルブギアの印象はこれに近いものになる。
OSはロストワックスパーツを加工しているようだ。

←OS井笠コッペル

エキスパンションリンク・リフティングアーム・ラジアスロッドに注目!

 

自作をはじめると今まで眼が届かなかったところを研究するようになる。砂撒き管や空気作用管ロストパーツに興味を持っているようではまだまだだろう。リフティングアームとラジアスロッドの締結を実にうまくクリアーしているではないか。
ライブはHOゲージと同じような細密加工でも楽しむこともできるが、それではライブ特有の「生きた機構」を楽しむことはできないだろう。

写真ひとつでもメーカーの考え方や効率を勉強できる。工夫を凝らした機構や簡便な工作法を吸収して次の機関車への設計で反映させていきたい。

←2個分まとめてR溝を加工する。材料は真鍮六角棒を所定の寸法8mmまで削って加工。

銀ロウ付け前

銀ロウ付け後。

これらに近づけるよう工作した。写真は三つ爪チャックにエンドミルを咥えて丸棒にR溝加工をしている写真である。めったに使わないバーチカルスライダーだが、やはりあるのとないのでは全然違う。剛性がないので簡単な工作にしか使えない。
スライダーに固定するため、真鍮六角棒の先端を切削して丸棒にし、そこへエンドミルを当てた。できるだけ左右のパーツに誤差が出ないよう注意した。左右のパイプの固定位置が異なると、ラジアスロッドの角度に差が出てしまう。これを調整するにはリフティングアームを調整すればよいが、調整箇所が増えるとそれだけばらすのが面倒になる。

できたパーツはそれぞれを貫通真鍮ビスで固定し(上左写真)銀ロウ付けする。その後、再度ドリル・リーマーを通して完成。