クロスヘッド
バルブ室関連は後に回し、先にクロスヘッドとスライドバーを仕上げた。 クロスヘッドは以下のような形状のパーツ(クロスヘッド骨@と呼ぶことにする)をサンドイッチして製作する。写真の物体の上辺はスライドバー下部に接触し、手前の部分にはピストンロッドが刺さる。また写真には残さなかったが、スライドバー上辺と接触する板(クロスヘッド骨Aと呼ぶことにする。下右写真の一番左に挟まれている板がこれである)も一緒にサンドイッチする。
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上右写真はクロスヘッド表板と裏板の間に上左の骨@を組み合わせて穴あけ作業をしている写真である。これを見ていただいて分かるとおり、骨の厚みは鋼材の厚み(9.0mmの黒鉄板)を利用している。。骨部品とスライドバーはすべて同じ厚さの9.0mm黒鉄板からレーザーカットしており、それぞれを組み立てるとスライドバーがスムーズに摺動するというわけである。 穴あけして位置決めができたら銀ロウ付けして補強する。これでクロスヘッドは完成である。余裕ができたら油壺を取り付けてかっこよく見せようと思う。 続いてスライドバーの加工を行なう。スライドバーもレーザーカットで形状は完成しているので磨きを中心に作業する。 スライドバーはレーザーカットで荒れた面を砥石で磨き、前回加工したピストン棒パッキン抑え兼スライドバー取付台にビス止めした。 スライドバーとスライドバー取付台座の穴あけは非常にシビアである。ピストン中心からそれぞれの穴位置がずれてはいけない。スライドバーの幅をノギスで測り、その半分の値をハイトゲージで設定して罫書く。一度罫書いたらこんどは加工物を表裏ひっくり返して同じ高さで罫書きしてみる。 ハイトゲージは1/100まで設定できるようになっているが、一度罫書いた加工物をひっくり返してもう一度罫書くとほぼ間違いなく中心線がずれている。理屈で言えば加工物の幅に対して正確に1/2になっているなら線は一本しかできないはずなのだが、ひっくり返すと必ず新しい罫書線が生まれる。 あらかじめこの誤差を確認しておき、ハイトゲージを設定する。スライドバー取付台座の方も同じ方法で穴あけ位置を罫書く。 この機関車はクロスヘッドとスライドバーの上下クリアランスはかなり余裕があるが、スライドバー横のクリアランスは、クロスヘッドの骨と同じ板厚の鋼材を使用しているため、ほとんどクリアランスが無い。つまり、シリンダー中心からのズレが許されないわけである。
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ピストンロッド位置を罫書き |
スライドバー・クロスヘッド・ピストン |
一方、クロスヘッドとピストン棒取付部だが、ここは本来ネジきりをしてねじ込みながら調整するのが理想である。セントラル鉄道8620はそうなっている。しかし、前述のように快削ステンレス鋼にダイスでネジきりするのは大変なので、次のように工作した。 |
1. | クロスヘッドにピストンロッドを固定するスリーブを銀ロウ付けする。 |
2. | ピストンロッドの長さはあらかじめ計算しておき、その長さに仕上げる。 |
3. | ピストンロッドをクロスヘッドのスリーブに挿入してロックタイトで仮固定。 |
4. | クロスヘッドとスライドバーの動きを見てから貫通ビスでピストンロッドを抜け止め加工する。 |
これにより、最終的にはピストンロッドの長さが調整できなくなる。しかし、ここは一度あわせてしまえば調整する必要はないのでこれでよいことにした。あとはピストンとシリンダー蓋とのクリアランスがきちんと確保できているかが問題になる。 ピストンとシリンダー蓋とのクリアランスは、前蓋側しか確認できない。後ろ蓋にはスライドバーが付いているからである。このため、後ろ蓋側のクリアランスは計算どおりの数値に仕上げるため、上写真右の状態でピストンと後ろ蓋の間にクリアランスと同じ厚さの板をはさんで調整した。 スライドバー、クロスヘッド、ピストンロッド、後ろ蓋、スライドバー取付台座が正確に加工できていれば、上右写真の状態でピストンがスコスコとスムーズに動くはずである。1番ゲージはこのようなやり方ですべりを確認する。 工作の結果、私は片方のスライドバーに問題が発生した。どうしてもクロスヘッドが後ろ死点の位置に来ると動きが悪くなるのである。スライドバーとスライドバー取付台座の締結ボルトを弛めるとスムーズに動く。 青ニス替わりのマジックでスライドバーとクロスヘッドの摩擦を確認してひたすらヤスリで仕上げたが、原因は加工精度ではなかった。 原因はレーザーカットの特性によるものだった。レーザーカットは断面がテーパーで仕上がる。また、加工時の熱で加工物が反ってしまったり、ねじれてしまっていたりする。今回は片方のスライドバーに熱によるねじれが生じており、特にスライドバー取付台座との接合面にねじれが出ていた。 ヤスリで修正するのは困難なので、スライドバーをバイスにはさんでハンマーで修正した。ハンマーで修正した後、ヤスリで接合面を再仕上げしたところ、クロスヘッドはスムーズに動くようになった。 |