動輪組立


軸箱、偏芯輪、タンブラー、動輪と、動輪を構成するパーツが出揃ったのでさっそく組み立てた。

第一動輪・第二動輪は軸箱を通すだけ。しかし主動輪になる第三動輪には偏芯輪とタンブラーを挿入してから動輪を固定する。もちろん全軸クォーターリングが必要になる。

クォータリングをするにはクランクピンを組み込まなければならない。本機関車のクランクピン径はすべて12mmである。
メーカー製ライブスチームは主動輪のクランクピンを太くしているものが多い。しかし、これはクォータリングを難しくする原因にもなる。すべて同じ径にしておけば治具も一つで済む上に精度が上がる。

下左写真はクランクピン穴あけ治具である。クランクピンの穴あけにもあらかじめレーザーカットで抜いた治具を利用した。治具こそレーザーカット等の外注でお願いする価値がある。なぜなら治具の工作は楽しくないからである。

写真で見える真鍮丸棒部分をひっくり返して動輪車軸穴にはめ込み、小さな穴のほうにドリルを入れて穴あけする。誰がやってもクランクピン距離を完全に一致させて加工できる。

クランクピン穴あけ治具

クランクピン抜け止め輪

設計上、旋盤フライス盤を不要としているので、動輪の軸穴は16mmで車軸と同じ径になる。クランクピンについてもまた同様である。私は旋盤のみ使用して製作しているので、動輪車軸穴は15.5mm、クランクピン穴は10mmで加工した。つまり車軸・クランクピンとも段付きになる。

まずは車軸、それからクランクピンの順で旋削加工した。クランクピンにはロッドの抜け止めを取付ける必要がある。この抜け止め(上右)もあらかじめレーザーで作った部品を使用した。自分で工作するのは磨きと皿モミだけ。

 

車軸・クランクピンのはめあいを確認

申し訳ないが、車軸とクランクピンの加工写真は撮り忘れたので無い。どちらもSK材を鋸で切り出して旋盤で加工した。8620の工作では知人に頂いた45C丸棒を使用したが、SK材(ドリルロッドとも呼ばれる)は真円度が高く、精度がよいので加工が楽だった。切削面も非常にきれいである。
こんなによい素材なら8620の車軸にも使うべきであった。欠点は2.0mの定尺販売であることと、価格が高めなことだ。

さて、これで部品が全部揃った。しかし組立にあたりまだ追加加工が必要になる。

軸動ポンプの偏芯輪は回り止めをしなければならない。偏芯輪の車軸に対する固定位置にはいろいろあるようだが、一応動輪位相を参照にして取り付けることにした。

車軸に回り止め芋ネジがはまるように皿モミを施して、偏芯輪には芋ネジを入れる穴とタップを立てた。丸棒の頂点にまっすぐ穴を開ける加工は何度やっても難しい。

所定位置に罫書いて穴あけ

偏芯輪に芋ネジ穴を加工

偏芯輪は左右で180度位相を設けて取り付けた。

車輪はロックタイトで固定する。まずは全軸片側だけ固定する。

組立にあたり主動輪は

左車輪−軸箱−留輪−(偏芯輪+タンブラー)−留輪

−留輪−(偏芯輪+タンブラー)−留輪−軸箱−右車輪

の順で部品が組み込まれる。たくさんの部品を入れて位相合わせになる。クォーターリング治具の部品はレーザーカットであらかじめ抜いてあったが結局使わず、8620の時にお借りした治具を再度借りて組み立てた。
部品数が多くロックタイトが固まるまでは予断を許さない。

8620でも書いたが動輪位相はすべての動輪が一致していることが大切なので、治具を含めて固定している最中は振動等にも十分注意して、できるだけ手早くすべての動輪を仕上げることが理想である。

私はロックタイトを塗って動輪を組み込み、1時間ほどで次ぎの動輪作業にはいった。本来は1日置いたほうがよいのだが、塗って10分もしないうちに強力な接着力を発揮するのでまず問題なかろう・・・とこのようにした。

あとからすべての動輪を確認したが全く問題はなかった。

車軸もクランクピンも固定はロックタイトだけにした。本当は車輪と車軸、クランクピンと車輪はピンで抜け止めを入れておいたほうが絶対によいのだが、どちらも穴あけにはエンドミルで軽くもむ必要があり、私の持っている機械ではちょっと難しい作業になる。

以前、クラブのC63が走行中にロックタイトで固定してあった車輪が抜けたことがあった。確かにロックタイトだけでは不安といえば不安だが、まあ・・・緩んだらまた固定すればよいだけの話である。


というわけでようやく動輪が完成した。たくさんの部品が車軸の中に納められており、軸動ポンプ偏芯輪・ストラップ・ベアリングなどのパーツ交換するときには動輪を抜かなくてはならない。

完成した動輪

しかし、自作の機関車であれば、交換の都合を考えて動輪を組み立てることができる。8620の「動輪抜き−車軸交換」のような作業は自作よりもはるかに面倒である。

コッペルの製作工程の内、動輪はボイラー、シリンダー関連に続いて時間がかかる面倒なところだと思う。