動輪鋳物切削

このプロジェクトで面倒な加工の一つが動輪切削である。動輪切削は旋盤を持っていない場合は外注で対応するか、旋盤を持っている知人にお願いするしかない。

特に、この機関車は設計上、動輪切削が工作時間にしめる割合はかなり大きいのではないかと思う。私は旋盤で鋳物を切削するのは初めての経験である。動輪の切削など難しすぎてできないのではないかと考えていたが、やっぱり「案ずるよりも産むが易し」である。

私が懸念していた動輪切削の問題点は以下である。

 1.四ッ爪チャックの芯出しがうまくできるか?
 2.バイトは何を使うべきか?
 3.バランスウェイトとリムの仕上げがうまくできるか?
 4.車軸と同芯円に加工できるか?
 5.タイヤコンタは設計どおりに切削できるか?

1.については、いつだったか忘れたがセンターファインダーを作っておいたのでこれを使用してセンターをだすことにした。
2.はグラインダーを持っていない私としては超鋼バイトしか選択できない。しかしチップを鋳物切削用に変更した。
3.「生きた蒸気機関車を作ろう」のやり方で行い、リムとバランスウエイトの境界に溝を入れることで対応する。
4.および5.は運に任せる。

というわけで旋盤に四ッ爪チャックをセットした。私の旋盤では切削前の鋳物を三ッ爪チャックで保持することはできなかった。オーバーサイズが理由である。どちらにしても、輪芯とリムが偏芯していてはかっこ悪いので四ッ爪を使用せざるを得ない。

まずは「ミニ旋盤を使いこなす本」を参考にセットした。手順としては

 1.大体中央と思われるところに鋳物をセットする。
 2.バイトを近づけてチャックを手で回し、偏芯しているところを探し出す。
 3.バイトとの隙間が一番広いところのチャックを少し緩め、180度逆側を少し締める
 4.3.を繰り返してセンターをだす。
となる。そんなに簡単には行かないだろう・・・と考えていたが、動輪を二個目に切削するときにはすぐにセンター出しができるようになった。
今回は木型の段階で鋳物のセンターに印をつけておいたので、2.の方法はとる必要はなく、代わりにセンターファインダーで中心を割り出すことができた。
これははっきり言って難しくなかった。本にも書いてあるが慣れの問題だ。

最初に表面を切削した。写真では穴を開けてしまっているが、これはセンター部分の切削が面倒だったのでさらっただけである。穴あけはこの時点でやる必要はない。
表面と同時に側面もチャックを削らない程度に切削する。外径サイズは削りすぎないことを前提に適当でOK。
四ッ爪を外し今度は三ッ爪に付け替えて先ほど削った外周をチャックする。これで大体芯が出せる。同芯円の精度はこの程度で十分にした。
そして写真右上のように裏を削り寸法まで追い込む。これは木型の段階で裏側を切削するようにしていたためである。実際は鋳物によってやり方は変えなければならない。

裏面の切削が終ったら、チャックから外さず穴を明ける。穴あけは動輪の裏から開けるほうがよい。というのは私の腕にも問題があると思われるが、穴は僅かながらテーパーに仕上がってしまうからだ。
旋盤中繰りでも同じ症状が出ている。リーマで穴を仕上げても同様だった。その寸法はほんの僅かであるが、車軸の加工を楽にするには裏から穴開けするに限る。

車軸は16mmSK材を使用するので、ボール盤しかもっていない場合には穴あけを16mmで行えば後が簡単だ。そのまま差し込んでロックタイトで固定する。
私は旋盤を持っているので車軸に段つき加工をして組み立てることにした。
ドリル刃はこのサイズになると高価になる。かといって中繰りをすると寸法がまちまちになってしまうので面倒が増える。面倒をなくす理由からもドリルを探さざるをえなくなった。太さが太さなので、テーパーシャンクのものが多く出回っている。
私は当然のように中古工作機械屋で中古刃を探し、15mm、16mm、18mm、19mmのテーパーシャンクドリルとリーマを何本か購入した。価格は安すぎて書けない。写真はMT-2テーパーシャンクドリルである。

全ての動輪の裏面を加工し穴あけが終わったら、続いて動輪固定用のヤトイを切削する。
ここに動輪を次々と取り付けて外径切削およびタイヤコンタを仕上げる。上右下写真は外径切削の途中である。
タイヤコンタは「生きた蒸気機関車を作ろう」の数値を基準に仕上げた。ただし、動輪厚みだけは17mmと肉厚である。理由は縮尺が8.4分の1ではなく6分の1になるためである。

切削過程・・・

こんな感じで車輪の切削は無事終了した。まあなんとキリコが飛び散ることか!!黒く粉っぽいキリコが部屋中に飛んでしまった。鋳物については思い切って1mmぐらいバイトを進めるのがコツなようである。スポーク部分は間欠切削なので騒音が大きい。アパートでは本当に気が引ける。

「ミニ旋盤を使いこなす本」にも書いてあるが、間欠切削はバイトと工作物の当たり音を聞き分けることでバイトの切れ味が分かる。「シャリ、シャリ・・」と聞こえている間はまず問題がない。「カン、カン・・・」という音になると大体刃こぼれがおきている。それでもチップ一枚で6枚加工できた。

なんとか・・・切削は終った。難しくはなかったが、とにかくうるさくて汚い作業だった!