2010年8月 乗用台車の製作A
先月、設計はある程度決まったので、なにはともあれ車輪の切削をすることにした。

車輪の切削は決してむずかしいものではないが、手間と時間はたっぷりかかる。特に私の使用してる旋盤は貧弱であり、また中途半端な大きさであるため、手間が倍かかるのである。

たとえば、車輪径80mmの車輪だったなら三ッ爪チャックだけで切削可能であった。また、C51や8620で使用されている960mm先輪の8.4分の1、114mm車輪であれば四ッ爪チャックだけで切削可能だ。

102mm径の車輪に限って、切削前の鋳物の段階では三ッ爪には大きすぎ、四ッ爪では小さすぎるのである。かろうじて鋳物のフランジ部分を四ッ爪でチャックすることはできるので、スタートはここからになる。

私の旋盤では以下の手順で切削する。

1.車輪鋳物の表面を切削側に向けてフランジ部分を四ッ爪でチャックする。
2.正面削りで車輪表面を平滑に仕上げ、踏面を適当に仕上げる。
  (三ッ爪でチャックできる寸法まで)
3.チャックを三ッ爪に変換し、2.で削った踏み面を外爪でチャックし、裏面を平滑に仕上げる。
4.厚みを設計寸法までそのまま追い込み、車軸用の穴をあけてリーマで仕上げる。
5.切削予定枚数の車輪をすべてここまで仕上げる。
6.ダミー車軸を切削して製作し、以後は全部の車輪を仕上げるまでチャックからはずさない。
7.すべての車輪のタイヤコンタを仕上げる。
これらは単純作業であり、また鋳物の切削は回転数を上げられないのでひたすら送りハンドルを回し続けることになる。以前、車輪の切削中にバイトのシャンクを折ったことがある。

現在使用しているスローアゥエイはあまり鋳物切削に向いていないため、工具商に相談して鋳物切削用のスローアゥエイを注文した。


切削した車輪

スペーサでリカバリー

新しいバイトの切れ味は素晴らしく、何より刃こぼれがおきないことが大きかった。とくに車輪裏面は間欠切削になるため、バイトにかかる負担は大きい。以前の刃ではまめに交換しなくてはならなかったが、今回使用したものは8枚削って1枚しか使用しなかった。スローアゥエイの形状は三角形なので、刃先を3回交換したということになる。

予定ではボギー台車4個(乗用台車2両分)切削する予定だったが、8枚切削してめげた。あれだけ時間をかけたにもかかわらず、文章にするとこれだけである。車輪鋳物の切削で困るのは熱い切り子が飛び散って手にあたることである。


車軸は16.0mmのSK材を定尺で購入して材料とした。設計図に基づきあらかじめ8等分してもらったが(2台分作るためだったが・・・)家に持ち帰り、図面通りに切削するとバックゲージが118mmをはるかに下回る寸法になっていた。

私は車軸を切削する際は車軸全長をきちんと合わせ、両端から切削するので設計ミスがあるとバックゲージが足りないという問題が発生するのである。

なぜだ!とCAD図面を精査したらやはり間違っていた(笑)。

定尺でSK材を購入すると高価なので、もはや買いなおす気力もなく、設計変更で台枠幅を変更して対応することにした。バックゲージが不足したおよそ4mmは真鍮でスペーサを切削して挟み込んだ。


2本目以降の車軸切削は設計変更後の寸法で行い、とりあえず車輪を4本仮組みした。この段階では車軸と車輪は接着していない。そしてベアリングを仮嵌めしてジャーナルのクリアランスを確認する。

一番左の車輪についているのが自動調芯ボールベアリングである。

この段階でジャーナルの寸法は全く問題がなく加工できていたが、なんと注文ミスでサイズを間違えていたことが判明した。厚さ10mmを注文する予定が12mmのものであった。写真でも1mmほど車軸が中に引っ込んでいることが確認できると思う。

ベアリングは工業製品の中でも管理が厳しいため返品には応じてくれない。しかし、幸いにも開封したのは一つだけだったため、残りの7個を正しい寸法のものに交換してもらった。

この手続きのために工作が先に進められなかった。


すべてのパーツが問題なく取り付けられたことが確認できたので、車軸・車輪をロックタイト638で接着した。このロックタイト638は使用期限を大幅に過ぎていた。
しかし、毎度ともいえるが1軸接着ミスを犯し、取り外そうとしたが強力に接着されており困難を極めたた。おそらく問題はないだろう。

どれだけ注意しても必ず車輪の固定にはミスが出てしまう。ふたたびベアリングプーラーのお世話になったことは言うまでもない。(コッぺルプロジェクト参照)

最後に塗装して車輪は完成。塗料はPOR15というさび止め塗料を使用した。このPOR15は自動車のレストア作業では必ず使用される有名なさび止め塗料である。浸透性が高く、下処理なく使用できる。また乾きが遅いため刷毛塗りでもきれいに塗装できる。

ただし、つやありしかない。光沢は避けたかったがやむを得ない。スポーク車輪のようなものは吹き付け塗装だと塗り残しがでやすいため、刷毛塗りのほうが簡単である。

てかてか塗装であまり好ましくないが、乗用台車だからまあいいとするか。