2010年7月 乗用台車の製作@


ライブスチームにかかわってから今年で10年を迎えるにもかかわらず、乗用(運転)台車を持っていない。
これまでは所属していたクラブのものを借りていたため必要なかったのである。アパート住まいの状況では置き場所の問題もあった。

現在は特定のクラブに所属していないので定期的にライブを運転することはない。しかし、運転会に出かけるときには自分のものを持っていかざるを得ない。

最近子供がライブの楽しさに目覚めてくれたので、今後8620の完成した暁に乗用台車がないのではこまる。
そこで思い切って製作することにした。


さて、作ると決めたのは良いが、設計を始めたらとても難易度が高かった。

乗用台車は実際に人を乗せて走るため、全幅、全長、重心、安全性の基準をどこに置けばよいのかわからないのである。
台車の形状を実物に近くすると、ばねの定数に困る。スケールに合わせて製作すると不安定になる要素が多くなる。
数々の運転会に参加し、いろいろな乗用台車に乗ったが、座りやすいものもあればそうでないものもある。軽いものもあれば重いものもある。
脱線しやすいものもあれば、足のステップが狭いものもある。

こればかりは実際に統計をとって寸法を決定すべきことなので、他の人の製作したものをあちこち測って決定した。
せっかく製作したものが脱線しやすかったりしてはたまったものではない。最初の一台目である程度のものを作りたいと考えている。
ベテランのライブスチーマーによると「運転台車は新しいものを作るたびに常にモデルチェンジをしている」ということだった。

今回、私はご近所に在住の師匠であるN氏に相談の上で設計を進めることにした。


乗用台車を製作する上で以下を条件とした。

@ 台車はそれなりの見栄えのものにする
A 車輪の径は102mmとし、ホイールベースは国鉄型台車の寸法に近づける。
B 保管・運搬を考慮し、台車を簡単に取り外しできる構造にする。
C 材料は合板を使用する。
D 以上を満たした上で、可能な限り簡単に作る。

Dを実現するなら、@とAは無視すべきである。しかし、乗用台車の安定性を高めるために車輪径を小さくすると、いかにも乗用台車と見えてしまうのが悲しい。
車輪径を小さくすると乗用台車の座面が低くなり、乗客を乗せた場合の安定性はとても高くなる。アングルとチャンネルを組み合わせ、ピロー型ベアリングを使えば確かに簡単だろう。

運客を目的とした乗用台車に実機のような見栄えを要求することは間違っているかもしれないが、すこしでも実物に近づけたいものである。

実際、車輪径102mmの乗用台車は機関車とのバランスがよくかっこよく見える。


結局、形状は板台枠とベッテンドルフ型をいいとこどりした。

 

 

 

台枠は厚さ6.0mm黒皮鉄板である。ベアリングは厚さ10.0mm自動調芯ボールベアリングを採用した。これを表と裏から厚さ3.2mmのスペーサーを挟んで台枠と共締めする。表裏には約1.0mmの隙間ができるのでベアリング内輪は車軸のねじれやうねりに対して追従することができる。

さて、ベアリングについてだが、乗用台車の軸受けにボールベアリングを採用するのは良いことではない。ボールベアリングの特徴として高速回転に対応しているが、ラジアル加重に対してはそれほど優れているわけではないからである。

車輪の軸受けにはローラーベアリングを採用することが基本である。ベアリングメーカーは各カタログで用途に応じたベアリングのラインナップを説明している。ベアリングの特性についてはこれらのページがわかりやすいのでお勧めである。

'転がり軸受けの形式と特徴'

過去、私はすべて針状ローラーベアリングを採用したがこれまで碌な手入れをせずとも全く問題なく動いている。大メーカーOSも採用している。内輪なしタイプはスケール機の軸箱に対応させることができるため汎用性が高い。

しかし、板台枠で軸箱を使わずにベアリングを設置するには薄型を選択せざるを得ず、またコスト面でも優れているのでやむを得ず自動調芯ボールベアリングを採用した。自動調芯の場合は構造上密封型は存在しないが、表裏からふたをするので防塵は問題ないだろう。

問題が出てもベアリングの交換は非常に容易で、しかも価格が安いので気は楽である。
台車中心ピンにはスラストベアリングは使用しない。真鍮のワッシャを挟んで対応する。


台車の取り外しは中心ピンで抜き差しするのではなく、上図面で紫線でかかれているプレートごと取り外すようにした。これにより、座箱?に台車中心ピンが残らないため保管・運搬が楽になる。M12のボルトで座箱と共締めする。

座箱は各パーツの角をR加工するため、DIY店のパネルカッターではなくレーザーカットを利用する。長さはサブロク耐水合板の板取りを考えてから決定する。(スピーカーの製作と同じだ!)

下は座箱の横、上、正面の図である。上面図の丸穴は台車を取付するねじ穴である。(図面の中心線がずれているがご愛敬・・・)横面図の紫線のパーツに雌ネジが切ってある。黄色線は耐水合板製の座箱。

設計はこんな感じで決定だ。
工程は車輪の切削、車軸の切削、ベアリングの取付。ここまで終えた段階で最終図面を確認し、台車のレーザーカットを発注する。
台車を組み立てて座箱図面を確認し、座箱をレーザーカット発注する。

最後に総組み立てをしてカプラーを取り付ける。結構な作業量である。いつまで仕事に余裕があるか心配だが、何とか完成させたいと思う。


さて、この連載に使用しているCADがいよいよ限界になった。WINDOWS7を新OSとして導入したためである。CB-CADはWINDOWS‐MEを基本にしている上、開発会社もすでに存在しない。

JW−CADに乗り換えるのが一番手っ取り早いが、なにせ使いこなすだけの時間が取れない。作図をマニュアルを見ながらちまちまやっているなら、別のパソコンを立ち上げどんどん作図して工作を進めたほうがよい。

でもそうはいっていられないのでJW−CADへの移行には全力を尽くそうと思っている。

1月に更新をして以来、なにもやってなかったのではなく、他の作業(バイクのレストア・・・)に徹していたため工作を進めることができなかったのだ。また、体調不良も重なり、4月から仕事が暇だったにもかかわらずホームページの更新ができなかった。

時間がなくても体調不良でもこのような乗用台車の設計を頭で考えることはできるので、なんとか更新にこぎつけた。