はじめに・・・
第1回は長文になってしまった。読むのも難儀だと思うが、きちんと伝えておかなければ、コッペルプロジェクトを掲載する意味自体がなくなってしまう。このサイトは技術的な工作記ではなく、思考的なものを大切にしたいと考えている。

私の一号機関車となったT-5改は、結局ボイラーの蒸気漏れを補修するために分解したまま人の手に渡り、すでに私の手もとにはない。私は現在走らせられるライブはもっていない。走らせるものがないと自然と運転会にも参加しなくなってしまう。結局やれることは工作しかなくなる。

ライブをはじめた頃は考えてもいなかったことだが、旋盤を導入してから自分でできる加工が多くなった。また外注先の開拓が順調にできたため、いろいろな可能性が拡がってきた。
正直な気持ちを書くと、機械加工済みのキット制作はすでに興味を失いつつある。
ホイホイと部品が組みつけられて、すでに走っているならこのような気持ちにならなかったと思うが、なかなかそうは行かないというのが連載でお分かりいただけたかと思う。工作期間は三年目に突入し、加えて頒布時の費用もバカにならない。
部品が送られてくると10万円近くを支払わなくてはならないが、キット制作当初の自分の技量から見た10万円と、現在の技量から見た10万円の感覚に大きな差が生まれている。

そこで自作の機関車に走ることになった。

木型を作ったときに感じたことだが、自分で木型を設計製作すると、加工の手順まで考えて鋳物を作れるという利点がある。たとえば、車輪鋳物であれば、予め車輪のボス部分に簡単なセンターマークを作っておけば四ッ爪チャックのセンター出しが簡単である。
厚さについても私はマンションの部屋で鋳物の切削をしなければならないので、できるだけ削り代は小さく取りたいという希望がある。
その他にも咥え代なども自分が持っているチャックから割り出して作れば掴み直しの手間なども省くことができる。

これと同じ考え方になるが、「自作設計制作機関車」は自分の工作レベル、所有している工作機械、工作環境、外注先、この4点に合わせて設計することで、その人にとって非常に作りやすく簡単な機関車になる。

結局ベストなゲージ、ベストな機関車、ベストな工作法はその人の置かれた環境によって異なってくるのだ。

最初に取り組んだT-5は、簡単な気持ちから「蒸機時代末期の産業ロコにしよう」と改造を試みた。しかしこれは今考えてみてもかなり難しかった。なぜなら、OSの機関車は完全完璧に設計されていて、どこか一つを変更しようとすると他でしわ寄せを受けるからだ。
元になる設計図面もないので、トライアンドエラーになる。

たとえば、「T-5の動輪を大型のものに変更しよう」と考える。しかしいざやろうと思うと、外火室との干渉、制輪子吊軸との干渉、シリンダーとの干渉が問題になり、せいぜい20mm程しか拡大できない。結局台枠ごと作り直したほうが楽という結果になる。
私はタンクを大型化したが、左右のタンクをつなぐ連通管の配管スペースに苦しんだ。タンク一つとっても問題が発生する。最初から純正部品がつくように設計されているのだから当然である。

8620にもおなじことが言える。
たとえば、設計ミスがありうまく組み付けできない部品があるとする。それを無理に取り付けようとすると、他の部品に干渉する・・・と言った具合である。自分で設計をしていない場合は、針の穴に糸を通すぐらい狭い領域で問題解決しなければならない。

しかし、先ほどの4点を考慮して自分で設計を行うと設計変更もまた簡単である。あらかじめ変更を見越して設計できるからである。針の穴からサッカーゴールぐらいの大きさに領域が広がるわけである。
「改造・改良」という一見簡単そうに見える工作は、実は奥が深く難しいものである。完全完璧に近い設計のものほど、加工手順、加工方法の領域が狭くなってしまうのである。

今回連載するコッペルは「ライブスチームの工作室」のY氏が設計したものである。Y氏は旋盤もフライス盤も購入せずに自作機関車が作れないものかという発想から本機関車を設計した。幸い?私はフライス盤を持っていないので、少なくともミーリングなしで制作することになる。また必要に応じて連載中で旋盤を使わずに加工するにはどうしたらよいかも説明していきたいと思う。

Y氏の設計は私の憧れの機関車制作に大きなヒントを与えてくれている。氏の意向が少しでも伝われば幸いである。

ライブスチームは高価で、限られた人のものではないということを少しでも証明できるように取り組みたい。私自身の設計能力取得の為にも・・・。

最後に、このサイトは不定期更新であることをご了承いただきたい。また、私の生活環境の急激な変化等により、途中で連載が終ってしまう可能性があることも加えてご了承いただきたい。